#その18 ハルトさん、ようやく二人きりになれましたね
#その18
「アマギハルトさんですね。よろしくお願いします」
先輩作業員はそう自己紹介すると、デブリの回収方法について説明を始める。
「まず、この装置を使って、デブリを捕獲します。」
そういうと彼は大きな装置を取り出す。それはパイプ状のもので、先端には網がついている。
「この網をデブリにかぶせて、引っ張れば簡単に捕獲できます。網は定期的に回収して、新しいものに交換してくださいね」
ハルトはその説明にふむふむとうなずく。
「では、早速始めましょうか。このエリアにはけっこうデブリが多いですよ!」
作業員はそう言って作業を開始する。ハルトもそれにならって作業を始める。
「まずは網を投げて、デブリを捕獲します!えい!」
ハルトはそう叫んで網を放り投げるが、うまく届かない。
「まあ、じきに馴れますよ」
先輩作業員はそういうとハルトから遠く離れた自分の割り当て場所に戻っていく。
ハルトは暗い宇宙空間に一人きりになる。遠くにコロニーの明かりが少し見えるだけの寂しい場所だ。
「ハルトさん、ようやく二人きりになれましたね」
3Dルミナがこっそりハルトの肩に現れてちょこんと座っている。3Dルミナにとってはコロニー空間であろうが宇宙空間であろうが関係ない。
「ああ、ルミナがいるからこんな場所でも寂しくないよ。さあ、指示しておくれよ」
ハルトがそういうと、ルミナがさっそくデブリの場所を教えてくれる。
「じゃあね、10時の方向距離1UM、大きさ50cm・・・」
ハルトはルミナの指示通りに装着したバーニアを操作してデブリに近づく。
「そうそう、そのまま、はい、見つけた、ネットイン!」
ルミナに言われるままにネットを操作して、デブリを捕獲する。
ハルトは捕獲したデブリをネットから出すと、事務所で支給された小型ロケットデバイスを腰のバッグから取り出し、デブリに装着して、発進スイッチを押す。
デブリはみるみるうちにハルトから離れて、コロニーの回収場所に向かい飛行する。デバイスにはハルトのIDが刻まれているので、到着したデブリがハルト捕獲であることの証明にもなる。
そう、この仕事は固定給がすごく安い、ほぼ歩合給の仕事なのだ。そのかわり、自分のペースで仕事に取り組めるし、捕獲したデブリの報酬もなかなかいい。