#その111 しっぽをぶんぶん振りたくなっちゃう・・よ?
#その111
この方法は機体が重たくなるほど大量の燃料を消費する。するとさらに大量の燃料が必要になるというループがあったため、当然宇宙空間に運ぶことができる荷物の重量には限界があった。
宇宙船ルミナは反重力コントローラを備えているために、少しずつ垂直上昇が可能であり、無用な加速も不要なため、乗員は非常に楽に宇宙空間に到達することができる。
それでも宇宙船サイズを地表から宇宙まで持ち上げるのは骨の折れる仕事であり、不具合が発生すれば、そのまま地表に落下する事故につながりかねない。どんなにテクノロジが発達しようとも自然現象に逆らうことは緊張を伴うのである。
宇宙船ルミナはエンジン出力と重力コントロールのバランスをうまくとりながら上昇を続ける。操船室の窓から見える周囲の景色は大気の薄い青から徐々に濃くなる。
濃い青もやがて漆黒と呼ぶのがふさわしい光が少ない宇宙空間に到達する。衛星軌道から惑星アルメリアを見ると、とてもきれいな星であることがわかる。こんな素敵な星を長い間出入り不可能にするとは、何を考えているのか見識を疑う。
「船長より総員へ、宇宙船ルミナは無事に宇宙空間に帰ってくることができたよ。そこで、そこにある宇宙ステーションにはずいぶんとお世話になったので、お礼をしたいと思うがどうだ?」
ハルトはこの宇宙ステーションが宇宙船ルミナに向けた敵意を忘れることはできないが、同情する点もあるので、向こうの出方次第では水に流すつもりである。
「ルミナ、賛成」
「ノバ、大賛成、やらして?」
「リリアが、やりたい」
ハルトの提案の真の意味がわかって、みんなにやにやしながら返事をする。
「みんなありがとう、ルミナ、宇宙ステーションの位置を特定してくれ」
「了解、船長。現在位置より方位010309に2000です」
「リリアへ、アリスが加わって何か変わったことがあるか?」
「リリアより船長、なんだか力が湧いてきて・・・こう・・」
「こう?」
「こう・・・しっぽを・・・」
「しっぽ?」
「しっぽをぶんぶん振りたくなっちゃう・・よ?」
「それと・・」
「それと?」
「耳も・・・ピンと・・立っちゃう?」
リリアのいうことはわかりにくいが、ごきげんな状態であるようなので、そのままにしておく。