#その104 アリス大統領、ずいぶんおきれいですね
#その104
アリスが深々とお辞儀をする。こっちが恐縮してしまう。
「アリス大統領、頭をお上げください。我々はできることをするだけです」
二人は満面の笑みを浮かべて、握手する。
「さあ、こちらへどうぞ、お茶にしましょう。」
アリスが一行をお茶に誘う。
ドックの片隅にはリゾートホテルもかくやと思わせる優雅なブースが用意されている。テーブルには人数分のお茶と椅子が用意されており、歓迎されているのがわかる。
周囲をきょろきょろと見回していたハルトはアリスに誘われるままに着座する。ルミナ、ノバ、リリアもハルトを守るように着座し、万一の緊急事態にいつでも対処できるようにする。
「アリス大統領、ずいぶんおきれいですね」
「ええ、ここのドックにたどり着けなくなり使えなくなったときは放棄しようかとも思いました。でも捨てなくて本当によかったです。」
「いやこのドックのことではなくアリス大統領、あなたのことですよ?」
アリスは余裕がないのか、ハルトの言葉にのってこない。
「そんな、私のことはどうでもいいのです」
「いや、よくないですよ、まあその話はまた後でしましょう」
ハルトは話を続ける。
「ハルト船長、今困っているのは惑星に降りてくることができる船がほとんどないことです。1000年前まではこの星には地表と衛星軌道を結ぶ軌道エレベーターがありました、宇宙船がなくても容易に移動することができたのですが、軌道エレベータも長い年月の間に地殻変動や重力変化で失われてしまい、今はその資源も尽きて・・・」
「こんなにきれいな惑星なのにもったいないですよね」
ルミナは空を見ながらいう。ノバとリリアは周囲を飛び回ってはしゃいでいる。
「ノバ、リリア、宇宙船ルミナのチェックに入ってくれないかな」
ハルトに言われて二人はしぶしぶと宇宙船ルミナのチェックに取り掛かる。
アリスはそんな二人の様子を微笑ましく見守っている。その表情は気のせいかルミナに似ている気がする。
「ノバ、エンジンはどう変わったかわかるか?」
「ハルト船長、宇宙船ルミナⅡのエンジンは、プラズマエンジンがバージョンアップして量子プラズマエンジンになったみたい。宇宙空間にとびかっている量子宇宙線を取り込むことができるから、燃料補給なしで長距離を移動できるよ」
「それはいい、量子宇宙線エネルギーは有効に活用しよう」