#その10 それであなたと入籍すると私にどんなメリットがあるのでしょうか
#その10
彼女はこの区別もつかないし、アラインも知らない。つまり、宇宙港職員を名乗る偽物に決定だ。
それでもいろいろ聞きたくてハルトは会話を続ける。
「このコロニーの宇宙港はとっても大きいですね」
ハルトは話題を変える。
「ええ、ここはメインスペースポートですから」
「宇宙港に宇宙船が停泊している様子も見えるし、ここからでもドックの様子も見えますね。」
「そうですね、ドックには大型艦が入港することもありますので、ここからでも確認できますよ。」
そんな会話を続けながら二人はカフェでランチを楽しむ。
食後はコヒーとテオを二人で楽しんでいると、スペースレディが話しを切り出す。
「私ね、このコロニーの市民株を持っているのだけれど、B級なの。」
「それがどうかしましたか。」
ハルトはスペースレディの話題に合わせる。
「実はね、B級市民だといろいろと不便が多いのよ。例えば割引クーポンも使えないし、お得なサービスも受けられない。」
「そうですか、私は宇宙港の職員ではないのでよくわかりませんが・・・。」
「それでね、私このコロニーを出ようと思っているの」
「えっ、簡単に出ることができるのですか?」
「それでね、ハルトさんにお願いがあるの」
「なんでしょうか?」
「初対面でいいにくいのだけれど、A級市民のあなたに偽装でもいいので、私と入籍して、ここから連れ出して欲しいの」
いよいよきたなと、ハルトは思うが、そんなことは気が付かないふりをして会話を進める。
「それであなたと入籍すると私にどんなメリットがあるのでしょうか」
ハルトはわざわざ不思議そうな態度を装って尋ねる。
「メリットって・・・あなた、ハルトさん、このコロニーで女性と結婚入籍できることがどれだけ難しいか知ってるのかしら」
「いや、最近まで宇宙にいたから世間のことにはうといんです」
スペースレディはやれやれといった態度を示す。