#その1 【挿絵とびら】ここは?死後の世界ってやつなのか?俺は死んだのか?
#その1
【異世界宇宙】宇宙船が彼女ですが、何か?
*序章 天城晴翔 異世界宇宙へ転生する
天城晴翔は24歳、日本の中小企業に勤めるサラリーマンだ。働くことは嫌ではないが、最近の社畜というトレンド?から考えるとベストフィットしている職場と言える。
今日も今日とて、10時過ぎまで残業という名前のタダ働きをして、ついさっき退社、家路についたばかりだ。晴翔の楽しみは家に戻ってからのゲーム三昧だ。学生時代から続けているこのゲームはいわゆる異世界宇宙を仲間と冒険するタイプで、このゲームを楽しみために社畜に甘んじているといってもいい。今日は珍しく日付が変わる前にアパートに着けそうなので、少しばかり足取りが軽い。
「さて、今日は奴らと新しい宇宙船を見に行けるといいけれどな」
などと独り言をつぶやきながら、家路を急ぐ。交差点の赤信号で止まって青に変わるのを待っていると、子犬がふらふらと歩道を歩いている。そして何を思ったか、子犬は突然赤信号を無視して、横断歩道を走りだす。
その瞬間、目の前にトラックが現れた。晴翔はあっ危ないと、感じる。子犬を助けようと無我夢中で走り出す。晴翔は間一髪子犬を助けて、反対側の歩道に転がったはずだが、現実は違った。
子犬を助けられて良かったと思った瞬間、どーんと体が宙に舞う感触がある。
「あっ、これははねられたかな」
外から見れば晴翔の体は宙に舞い、道路にたたきつけられている。子犬は無事だったらしく、晴翔の腕の中から這い出して、歩道をよたよたと去っていくのが見える。
晴翔の心臓と脳みそは機能を停止する直前、これまでに経験した記憶の再生を試みる。晴翔はごく短時間で楽しかった思い出を追体験し、そして心臓は静かに停止する。
「こちらへどうぞ」
晴翔が気が付くと、真っ白な部屋にたたずんでいる。
「ここはどこだろう」
そうつぶやくと晴翔はあたりを見回すが、真っ白である。自分の心音だけがドクンドクンと、いやに耳障りに響く。
「ここは?死後の世界ってやつなのか?俺は死んだのか?」
晴翔の疑問に応えるものはいないが、その答えはすぐにもたらされる。空中から手品のように現れた人影がある。