memory9. 小さな夢
広報誌を製作中だがどういう記事にするか悩んでいる。でも悩みは一つではない。修司さんが言っていた「まゆ」の事だ。まゆって女性の名前だよね。うーん。「まゆ、まゆ、まゆ…」コンコン。
「はい」ドアを開けると修司さんが立っていた。
「ど、ど、どうしましたかっ?」
「もしかしてお取り込み中でしたか?」
「い、いえ!」
「運動会のときの写真とデータができましたので」
「ありがとうございます」
「メダル飾ってるんですね」
「ええ、嬉しくて」
「葉月さん速かったですね」
「そんな事ないですよ」
「まゆみたいでした」
え?「まゆ…?」
ここでその名を聞くとは。
「はい、遊びによくドッグランに行きました」
ドッグラン?「まゆって…」
「実家で飼ってる豆柴の名前がまゆって言うんです。眉みたいな模様があったのでまゆって名前なんです」ニコニコとする修司さん。何だ、犬の名前か。良かった。
ん?何でそう思うんだろう。
「何か裕貴君を見てるとまゆみたいで放っておけなくて」
「ふふ、ファミレスも喜んでくれて良かったですね」目をキラキラさせながら、お子さまランチを食べていた。おまけでもらった恐竜のおもちゃはしっかりと机に飾ってある。
「そうだ、今日の夕食何にしよう?」
「でしたら俺が作りますよ」
「本当ですか?まだ広報誌おわってなくて、お願いします」
「分かりました」
広報誌ももう少しでできそうだ。
「葉月さーん、ご飯できましたよ!」
「はーい」
テーブルにはオムライスが並んでいた。ケチャップで何か書いてある。
「はづき、しゅうじ、ゆうき」それぞれの名前だった。
「それ裕貴君が書いてくれたんですよ」ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「どうしましたか?」
「下手だった?」
二人が心配している。
「違うんです。嬉しくて。私、家族がいなくなったから、こうしてもらえるのが夢だったんです。小さいけど」
「何言ってるんですか?もう家族、でしょ」
「はい…そうでしたね」笑顔になれた。
もちろんオムライスは美味しかった。




