memory6.授業参観
「授業参観?」洗い物をしていると裕貴君がプリントを渡してきた。
「はい、葉月さんか修司さんに参加してもらえれば…」
「再来週の土曜日ね。私で良いかしら?」
裕貴君は笑顔で「はい」と答えた。
当日、悩みに悩んだ服を着てメイクをする。「こんな感じかしら」授業参観に見られる側から見る立場になるとは不思議なものだ。
小学校に着くとまずは裕貴君の教室を探す。「えーと、3組、3組…」あった!中に入るとすでに何人もの親が立っている。
「あら、あなた見ない顔ね」ボスママか!
服と鞄はブランド、全身ブランドで身をかためている。
「初めまして、大倉裕貴の母です」という事にしておこう。
「あらそうなの。私は高村真鈴の母です。宜しくね」
「こちらこそ宜しくお願いします」
ちょうどそこに先生が入ってきた。
「今日は授業参観日で皆のお母さん、お父さんが来ています。そこでこの前書いてもらったお母さん、お父さん達に向けた作文を読んでもらいます」
えー!裕貴君のお母さんヤバい人だったじゃん。大丈夫なの?そんな事を考えていた為、他の子達の作文なんて頭に入らなかった。
「じゃあ次は裕貴君ね」
「はい、僕のお父さんとお母さん」うわー。「僕のお父さんは小説家です。難しそうな本ばかりですが小学生向きの本もあったので読んでみました。僕が分からない漢字があると丁寧に教えてくれます。
そのおかげで漢字のテストは百点をとることができました。とても嬉しかったです。そんなお父さんを僕は尊敬しています」
そうだったんだ。知らない部分はまだまだあるのね。当たり前か。
「ただ、職業柄、部屋にこもっている事が多いので、少しは外で運動をした方が健康的で体に良いと思います」それは言わなくて良いのよ、裕貴君。
「お母さんは」何だろう。「とても優しい人で、僕の事をよく褒めてくれます。
特に料理が上手でご飯がとても美味しいです。この前、ハンバーグをお母さんと一緒に作りました。僕が作ったハンバーグは形が悪いのに美味しいと褒めてくれました。
お父さんもいつもより10倍美味しいと言ってくれたので今度は100倍美味しいハンバーグを作ろうと思います。お母さんとの勝負、腕が鳴ります。今度も負けません。
僕はそんなお父さんとお母さんが大好きです」皆はパチパチと拍手をする。裕貴君は私に向かってピースをした。私はこっそりピースを返した。そんな事を感じていたなんて思いもしなかった。それよりもこれ2年生が書ける作文のレベルなのか?分からない。




