memory5.家族
「ただいま、葉月さん」学校から帰ってきた裕貴君が部屋に入ってきた。
「お帰りなさい」あれから少しずつではあるが慣れてきたようで良かった。
「お帰り~」大倉さんも自室から出てきた。
「今日、学校でイースターエッグ作ったんです」はいっと見せてくる。
「裕貴君、お絵描き上手だもんね。良くできてる」嬉しそうな裕貴君。
「これ玄関に飾っておきましょう」
「そうだね。そんな時期ですか」
のんびりしていた大倉さんが「ああ、そういえばお花見の時期ですね」
「確か近くの公園はもう見頃でしたよ」
「丁度明日は学校がお休みですし行きましょうか。お花見」大倉さんの一言でお花見が決定した。
翌日、お弁当など一式を持って近くの公園に向かった。もちろんお弁当は手作り。張りきって作った自信作。
二人はトイレに向かっていた。
シートを広げ、お弁当をだしていると「あら~橘先輩じゃないですかぁ。ご無沙汰してますぅ」この声は美加。
「もう先輩じゃないかぁ」ふふふと笑う美加。その横にいるのは智久。まずいという顔をしている。
「一人でお花見?寂しい~」
「もうやめろって」智久が止めるがまだバカにする美加。
「それともお母様達とですか?一人で場所取りお疲れ様ですぅ」
もうやめて欲しい。手をギュッと握っていると向こうから「お母さん!」、「葉月っ!」大倉さんが裕貴君を肩車してこちらに戻ってきた。
「は?お母さん?」美加は呆然としている。「こちらの方は?」そこで裕貴君を降ろす。「元の職場の…後輩です」
「そうでしたか。その節は妻が大変お世話になったようで」ニコニコと挨拶しているが黒い笑いの大倉さん。
「ほら裕貴、挨拶しようね」
「はい。初めまして、大倉裕貴です」
「え?子供?」
美加が大声で「何で先輩にイケメンな旦那と子供がいるのよ!あり得ない!」
「もうやめろ」そこか。昔から何も変わっていない。
「そういう事だから」と無視しようとすると今度は大倉さんにターゲットを変更した。「私、葉月さんの後輩だった山内美加って言いますぅ~。大倉さん、良かったら一緒にお花見しませんかぁ?」お前には彼氏がいるだろうよ。
「すみません、今日は家族で楽しみたいので。山内さんは彼氏さんがいらっしゃるから、お邪魔してはいけませんね」
「…!」美加はフンッと言って去っていった。
「ありがとうございました」
「いえ、俺だけ近くにある販売機で飲み物を買っていたんですよ。そうしたら先ほどの会話が聞こえたので、ひと芝居打ちました。ご迷惑でしたか?」
「いいえ、助かりました」
「裕貴君もありがとう」エヘヘとわらう裕貴君。「本当に家族みたいね」
「もう家族じゃないですか」その一言に顔を赤らめる私だった。




