memory4.新しい家
「着いた。ここが今日から裕貴君のおうちだよ」
「ありがとうございました」ちゃんとお礼を言える。偉い子だ。
「私の名前は橘葉月、あっちのお兄さんは大倉修司さん。よろしくね」
まだ慣れていないからかモジモジしている。
「今日のご飯はハンバーグにしようと思うの。ハンバーグ好き?」
「好きです!」真っ先に答えたのは大倉さんだった。「ふふ。裕貴君に聞いたのに」
「そうですね。でも俺は橘さんのご飯は好きですよ」これには照れてしまう。
「僕も…好きです。ハンバーグ」可愛い!
「じゃあお姉さんのお手伝いしてくれるかな?」
「はい」ちょっとだけど笑顔が見れた。
歪ながらも手作りハンバーグが食卓に並んだ。「上手にできなくてごめんなさい」裕貴君が謝る。
「何を言ってるの?どれも美味しそうじゃない」私はパクッと口に入れ、「うん、美味しい。やっぱり裕貴君が手伝ってくれたおかげね」
大倉さんも「裕貴君、美味しいよ。いつもの10倍美味しい」
「えー、私負けちゃった」すると裕貴君がポロポロと涙を流し始めた。「え?どうしたの、裕貴君」焦って聞くと「僕…こうやってご飯食べた事ない。いつもコンビニのお弁当ばっかり…」
「そう、でもこれからは皆でご飯食べられるわよ。そうすると何倍も美味しくなるの」「うん」
洗い物を片付けていると裕貴君が話しかけてきた。
「あの…」
「なぁに?」
「今日、葉月さんと一緒に寝て…いいですか?」やっぱりお母さんと離れて寂しいのだろう。「良いわよ」
私のベッドで寝る事にする。「お休みなさい」電気を消して寝る。
しばらくしたころだった。「グスッ…グス」
裕貴君だった。やはり母親と離れて寂しいのだろう。私は裕貴君をギュッと抱き締め、「お母さんの方が良かったわよね、ごめん。ごめんね」
違うと首をふる裕貴君。
「そんな事…ない」
「我慢しなくて良いのよ?」
「うん。でもお母さん、夜いなかったから、寂しかった。一緒に寝てくれて嬉しい」何という母親だろう。夜に子供一人にするとは。やはりひどい母親だった。その分まで裕貴君の心の穴を埋めよう。
その日は裕貴君を抱き締めて寝た。




