memory3. 裕貴
モヤモヤした気持ちで帰ると、家の前に小さな男の子が座っていた。小学生か。車から降り声をかけてみる。
「どうしたの?」黙っている。
「どこから来たのかな?」
「うち…」うち?学校からではなく?
「帰らないの?お母さん心配してるかもしれないよ?」
「してない。男の人が来るから外に出ていなさいって」
何それ。
「どうしたんですか?」大倉さんも車から降りる。
「この子、お母さんから家に入るなって言われたみたいで」
「怒られたという事はないんですよね?」「はい。男の人が来るからと」
「分かりました。行きましょう!」
「児相ですか?」
「いいえ。この子の家に」えー!?そっち?
子供の名前は高岡裕貴君、小学2年生。ビクビクとしている。
車を停め、大倉さんが話しかける。
「ここの家だね」
「…うん」そこは古びたアパートだった。3人で部屋に向かう。「ピンポーン」チャイムを鳴らすが出てこない。もう一度鳴らす。出てこない。そして大倉さんは諦めない。6回目でようやく出てきた。
「どちら様~?何回もうるさいわね…裕貴?」出てきた母親は派手な格好をしていた。
「外にいろって言ったじゃない」面倒くさそうに言う。
「あなたが裕貴君のお母さんですか?」
「だったら何よ?」裕貴君は私の後ろに隠れた。
「お子さんを外に放り出すとはどういう事ですか?」
「彼氏が来るから邪魔だったのよ」
「邪魔?」
「そうよ。面倒なのよ。いらないからあなた達もらってよ」そう言って奥から財布を持ってきて3万円を付き出す。
「ほら、これでいいでしょ?」
「ふざけるなっ!」母親の手をバシンと叩く。
「子供はモノじゃない!一人の人間なんだ。人の命をお金でを売るなんてあってはならない。お前が母親なんて、親なんて認めない!」
普段の大倉さんからは想像できない大声。「いらないと言うのなら俺達が育てます!」裕貴君が私のスカートをギュッと握る。
「そうですね。行こう、裕貴君」
「裕貴!」母親が叫ぶがもう裕貴君の気持ちには届いていない。
「僕、お兄ちゃんとお姉ちゃんの所に行く」「勝手にしなさいよ!」そう言って学校に必要な物やら裕貴君の物を投げつけてくる。それらを拾って家に帰った。




