memory15.少年探偵
最近、修司さんと葉月さんの様子がおかしい。
裕貴少年は悩んでいた。
算数の勉強以上に。
本来なら勉強の方を優先しなければいけない。だがこれは家族の問題だ。一大事なのだ。
クラスの女子も言っていた。
『ふうふのもんだいってむずかしいのよ』と。どうやらドラマの話みたいだが。二人は実際の夫婦ではないが事情があった為、それに近い関係。これは当てはまるのかもしれない。
だんだん探偵になったような気分になる。
僕が解決するんだ!そこで今日も二人の様子を観察する。
「は、葉月さん!」
「なっ、何ですか?」
「あの…ですね」
「は、はい」
「その、ほ、ほ…」
「ほっ?」
「ほん、ほん、ほん…」
「そうだ!買い忘れた物がありました!」
葉月はそう言うと財布を持たずに出ていってしまった。
「ああ…」
項垂れる修司さん。
あやしい!!
何かを尋ねようとする修司さんと何かを隠そうとしている葉月さん。すれ違う二人。
『りこんげんいんがすれちがいってよくあるわよね』これも女子が言っていた!
もしかして離婚!?
仕事で部屋にこもっている事が多い修司に家事が忙しい葉月は本当は手伝ってほしい、話を聞いてほしい。
でもそんな事は言えない。日々、ストレスが溜まって外に『しげき』を求め浮気に!
その浮気を隠そうとしている葉月にそれを問い詰めようとしている修司。
アレ?でも結婚はしていないぞ。
じゃあ解散!?
…また一人になってしまう。嫌だ!
ここはやはり探偵の出番だ。
手がかりは修司が言っていた『ほん』
葉月はこの言葉に反応していた。
『ほん』と言ってまず思い浮かぶのは『本』だが何の関係が?
本といえばこの算数のドリルを近所の本屋で買ってきてくれた。
本屋?
そんな事を考えているとバタバタと音がして葉月が戻ってきた。
「お財布忘れちゃいました〜」
財布を持つと急いでまた行ってしまった。
修司は何やらブツブツ言いながら頭を振ってを繰り返している。
謎は深い。
ここは尾行だ!
急いで葉月の後を追う。
「うーん。どこに行くんだろう?」
気付かれないようにコソコソと物陰に隠れながら進む。
着いたのは近所のカフェだった。
中に入り、注文をしている。
ここで浮気相手と落ち合う約束でもしているのだろうか。
窓側の席なのでよく見える。
浮気相手と会えるというのに何故か浮かない顔をしている。それに向い側をじっと見つめているようだ。
「ん?」
向い側は…
本屋さん!!
あそこに浮気相手が!?
よし、行ってみよう。家族の為!勇気をふりしぼって聴き込み調査だ。
「いらっしゃいませ」
中に入ってみると店員は三人。
掃除をしているおばさんとレジにいるお姉さん。あとは入り口近くの雑誌を整理している眼鏡を掛けたお兄さん。
この人かもしれない!
「あ、あの…」
「いらっしゃい。何かな?」
「最近、小学校2年生の、算数のドリルを買った、女の人を覚えていますか?」
言えた!
「ドリル…ああ、いたよ。知り合いだからね。覚えているよ」
「ぼ、僕、その人の子供です」
実際は違うがそういう関係だ。間違ってはいない。
「え!そうなんだ。葉月ちゃんの息子さんか。初めまして、鈴城です」
葉月の名前が出た。
ここで探偵・裕貴少年はキメる。
「犯人はあなただ!」
「え?」
その頃、葉月はアイスコーヒーを飲みながら悩んでいた。
「あ〜、修司さん絶対にあやしいと思ったよね…」
買い物なんてないのにウソをついて出てきてしまった。そこでこのカフェに入って避難をしている。
修司の話だと、どうやら本屋にいたのは見られていたようだ。小説を書く仕事なのだから本屋に行く事はあるだろう。たぶん。
そこで関係を尋ねられたらおわりだ。
暴力女だと思われてしまう。
修司にも、もちろん裕貴にもそう思われたくない!
頭を抱えていると向いの本屋に裕貴らしき子供が見えた。
「裕貴君?」
店員と話している。
あれは鈴城君だ!
まずい!
葉月は急いでカフェを出た。




