俺のまわり
目を開けるとそこはまさに地獄だった。
4階建ての校舎は跡形も無く崩れ去り、辺りはコンクリートの残骸で埋め尽くされ、まるで瓦礫の海のようだった。土でつられた校庭にはいくつもの亀裂が走り、遠くのほうでは、人々が逃げ惑う声が聞こえてくる。この時の感想はこんなところだった。しかし、俺はそこまで考えてあることに気が付いた。
なぜ俺は、死んでいない?
涼が瓦礫に飲まれそうになって、それを助けれるわけ無いのに、馬鹿みたいに飛び込んでスクラップになるはずだった。
そもそも涼はどうした・・・?
俺は辺りを見渡した。後ろのほうに、絵の具が見えた。赤色の絵の具。赤というより、どす黒いむしろ黒に近い、まるで『血』のような・・・。
「うえぇぇぇぇぇ・・・・・・・ッ!!」
絵の具じゃない。血だ。人の。指を切ってでてきた血なんかじゃない。漫画で主人公が出すような大量の血。あれは多分友達の、涼じゃないほかの友達。
その数人の友達の手が瓦礫の合間からダラリと出ていて、そこから血がどくどくと溢れだしていた。
本気で吐いた。友達を見て。それがどれだけ失礼なのか、俺はその時全く知らなかった。あの時、遠くに見えたあの手は、すでに友達のものではなく、ただのグロテスクな『モノ』だと理解してしまっていた。
目の前の吐遮物をみて、また吐きそうになった。そして、俺はまたあることに気が付いた。気が付いてしまった。
俺から半径2メートルの円。そこだけ瓦礫も亀裂も、何も無かった。
まるで俺の周りだけ、何も起きていなかったというように。
「・・・・・な・・・んで・・・・」
茫然とつぶやいた。
確かに、俺の頭には瓦礫が降り注いだはずなのに・・・。
「理解できませんか?この現象に」
不意に頭の上から声が降ってきた。恐ろしいほど冷たい声音。まるでついさっきの現象に興味などないと、言外に告げるような冷たい、声音。
恐る恐る頭を上げ、声のしたほうを向いた。
そこには、俺の世界をぶち壊そうとしていた
『神原神音』が立っていた。
遅くなりました。2話目です。短いですが、2話目です。