イベント当日②
『お、もう誰かログインしてるね〜!こんにちは!』
突然男性の声がしたので驚いてしまった。
考え事をしていて気がつかなかったが、誰か入室してきたようだった。
慌てて私は
『こ、こんにちは! ミカと申します!』
と挨拶をした。
『ミカさん、初めまして〜ポコたろーです〜』
『は、初めまして、よろしくお願いします・・・』
まさかの推しの登場でびっくりしてしまった私は、咄嗟のことでうまく話せなかった。
それよりも
(さっきの独り言聞かれてないよね!?)
ということが気になってしまっていた。
すると彼から話しかけてきた。
『ミカさん、こちらの音声は問題なく届いてますか?』
よく見ると彼のカメラもONになっており、画面には私の他に黒っぽいマスクをした男性が映し出されていた。
『あ、はい。音声もカメラも大丈夫そうです・・』
『あれ!?もしかしてカメラONになってる!?』
カメラに映った男性が、推しの声で返事をしてきた。
要するにこの人がポコたろー本人ということだ。
何やら慌てている。
(うわー、推しの姿見ちゃった!マスクしてるし目元しか見えないけど!)
カメラの画質的に細かくは見えないが、『想像と全然違う!』という感じでもなく、彼は普通の男性だった。
(一重なんだ、、、)
と思ってると、彼のカメラがOFFになって姿が消えてしまった。
『カメラOFFにしたつもりだったのに・・・ミカさん、僕の姿見えちゃいましたよね?』
不安そうに彼が聞いてきたので、驚いてしまった。
時間的には10秒ほどだったと思うけど、見てしまった。
というか、今日のイベントでも実写NGなの!?見ちゃった私大丈夫なの!?
『あ、すみません、見えちゃいました、あはは・・・』
『いえ、こちらこそ、、おどろかせてすみません』
乾いた笑いで素直に答える私。
彼は返事をしてくれたが、心なしか声が小さくなったような気がする。
どうしよう、怒ったり落ち込んだりしてないかな、、、
そんなことが気になってしまった私は、思わず声をかけてしまった。
『マスク姿しか見えてないし、かっこいいので大丈夫ですよ!』
これフォローになってるの?何言ってんだろ、私。
『・・・あ、ありがとうございます』
ほら、推しもちょっと困ってるし!うわー言わなきゃよかった!
と、私が一人脳内で後悔していると
『かっこいいって、しっかり見てるじゃないですか〜〜〜笑
あ!かっこいいを肯定したわけじゃないからね!笑』
彼が笑いながら再度返事をくれた。
よかった、別に気にしていないみたい。
『あ、すみません、実は一重だなって思ってました笑』
調子に乗ってさらに私は変なことを言ってしまった。
『あ〜見られちゃったか〜
実は一重なんですよ、内緒にしててね笑』
と言われて、ドキッとしてしまった。
そうか、普段は顔出ししていないから、今彼の顔を少し見ちゃった私は、彼の秘密の一部を共有しちゃってるのか!
と考えていた。
なんだか照れちゃうような気もするが、とりあえず推しと絡めて嬉しくなった私なのであった。