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君との春
新しい土地にも 慣れてきたと思ってた
でも 君に 春を教えてあげようとして
つくしの場所を 知らなくて
ふきのとうの場所も 知らなくて
わたしのなつかしい春が 見つからない
ここは わたしの育った場所じゃない
そんなことは わかっていたのに
わたしの知ってる春は 砂まじりの雪の匂い
ひっそりと雪を割る福寿草 北の斜面で雪をかぶった熊笹
屋根から滴るしずくのきらめき
山はまだ白いままで 玄関フードには出しっぱなしのスキー
台所で新聞を読む母 ストーブの前でテレビを見ながらうたた寝をする父
思い出が 胸をチリチリと焼く
こんなに遠くに来るなんて あの頃は思ってもみなかった
君に教えてあげられる春がないから
君と知っていく新しい春のために 小さな図鑑を買った
まずは いつもの道から はじめよう
いつかは わたしの春にも 出会えるといい