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4. 合意

「随分と率直なのですね」


「ええ。私は恥ずかしながら、迂遠な物言いがあまり得意ではないので」


ルカの方でもアリスティアの探りには気づいていたのだろう。急に貴公子然とした態度を崩したものだから少し驚いてしまう。確かに世辞や直接的な表現を避ける貴族特有の物言いはまどろっこしいが、随分と思い切りが良い。話せる相手と信頼されたのか、単になめられているのか。まあどちらでも構わないかとアリスティアはその思考を切り捨てる。


「ふふ、であればわたくしもそれに倣いましょう。おっしゃる通り、この婚約はわたくしが望んだものではございません。単にこの歳で婚約者がいないわたくしを気遣ったお父さまの仕業ですわ。ですからわたくしはルカ様が望むのであればこの婚約はなかったことにしても構わないと思っています」


「そうですか。それならば婚約はこのまま続行という形にしていただきたい」


「どうしてか伺っても?」


「ええ。貴女にもご迷惑をお掛けするかもしれないので予め聞いていてもらった方が良い。実はある女性から不本意な婚約の打診をされていて、それを断る口実となっていただきたいのです」


意外というほどのことでもない理由だ。ある女性というのにも、少しは心当たりがある。確かにコンラートがついていれば、防波堤としてはこの上なく機能するだろう。


「事情はわかりましたわ。わたくしでお役に立てるのならば、ほとぼりが冷めるまで婚約するという方向にいたしましょう」


にこり笑いながらそう告げるが、ルカは怪訝そうに眉を顰める。


「それでは貴女に何のうまみもないのでは?」


「うまみ、ですか?」


「ええ、今の話だと貴女はただ時間を無駄にし、婚姻相手も得られないことになる。こちらの事情を汲んでくださるのですから、アリスティア殿下。貴女も私に要求しても良いのですよ」


そう言われ、アリスティアは少し首を傾げて考える。目の前の青年に要求したいこと…そんなのは特に思いつかない。だけどわざわざそれを向こうから行ってくるくらいだ、何かこちらにも要求してもらわないとおさまりが悪いというタイプなのだろうなと思う。


「そう…であれば、偶にわたくしを遊びに連れ出してくださいませんか?」


「そんなことでよろしいのですか?そんなことは婚約者をやるうえで当然のふるまいかと思いますが」


「ええ、普段孤児院の慰問や礼拝以外は引きこもっているので退屈しているのです。それに社交界からは縁遠いもので、友人と呼べる友人もおりませんの。ですからルカ様に時折相手をしてもらえると嬉しいですわ」


それは適当に口にした言葉のはずだったのだけれど、思いのほか良い案のように思われた。アリスティアの離宮にはいつもヒュースがいる。ヒュースを忘れるための時間がアリスティアには必要だった。

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