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3. 顔合わせ

初めて対面したルカ・アイディンは美しい容姿をしていた。


「初めまして、アリスティア王女殿下。お会いできて光栄です」


優美な微笑みと自信に溢れた声。そして女好きのする甘い眼差し。

これに公爵家嫡男なんていう身分までついてくるのだから、当然引く手数多だろう。

アリスティアも王族の末席を汚すものではあるが、有力な後ろ盾を持たない身だ。この青年からすれば、アリスティアから得られる旨みは少ないだろう。自分を卑下するわけではないが、よくこの婚姻話を受けたものだとアリスティアは思った。


「ええ、ルカ様。わたくしの方こそお会いできて嬉しいです」


けれどそんな気持ちなどおくびにも出さない。アリスティアは王女だ。いつ何時であっても、優美に見えなければならない。


「どうだ、アリスティア。余の見込んだ男だけはあるだろう。気に入ったか?」


「ええ、わたくしには勿体ないのではないかと気おくれしてしまうほどですわ」


ふふふ、わははと親子二人、顔を見合わせて笑い合う。


アリスティアは親子の次は家族ごっこかと薄寒い気持ちを抱えながらも、その場に相応しい表情を取り繕い続けた。


暫くの間3人で雑談をしていると、後は若いお二人で、などと気を利かせたつもりなのか。コンラートは席を外し、後には二人が取り残された。


「困った父で申し訳ありませんわ。今日もきっと無理やり連れてこられたのでしょう?」


ちょっと考えればわかることだ。初顔合わせが3人きりなんて貴族の婚姻ではありえない。大方、アイディン公爵に話を通していないのだろう。

ルカは近衛騎士として王宮に出仕している。気に入った側付きの騎士を戯れに娘に当てがおうと気まぐれを起こしたというわけだ。そして放っておけばその気まぐれが叶ってしまうだけの権力がコンラートにはあった。


「…まあ、正直に言ってこの話が一般的な手順を踏んだものでないというのは確かですね」


「はぁ、お父さまったらやっぱり。父に代わって謝罪いたしますわ」


「いえ、王女殿下に謝っていただくことでは。それに貴女のような美しい女性が相手なのだから、謝罪どころか、私は神に感謝すべきでしょうね」


おどけたようにさらりと容姿を称賛されて、アリスティアは素直に感心した。身の回りにいる男性と言えばコンラートかヒュースくらいで、このような甘い台詞は滅多に聞いてこなかったからだ。


「まあ、口説いて下さるの?嬉しいわ。けれど、わたくしが本気にしたら困るのはルカ様ではなくて?」


くすくすと笑いながらも、ルカの出方を探る。これが不本意な婚約なのだとすれば、アリスティアの方から断りを入れねばなるまい。角を立てないためにも、そうするべきだろう。


笑みの形で細めた瞼の隙間から、そっとルカの表情を見つめる。ルカの表情は相変わらず笑顔のままだが、首を少し傾げて何かを考える風だった。


「私はこの婚約は貴女が望んだものだと思い込んでいたのですが、先ほどからのお話を伺っているとどうやら違うようですね」

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