表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘くない果実  作者: くるねこ
8/16

4-2見つけたところで終わっていた

 りんごと桃子は夕飯の買い出しでスーパーに行った帰り家の前に見覚えのある人物を見つける。


「リュウ!」


自分をさらった人間とはいえ友人には変わりない。

二人がその姿を見つけたため走り出すとリュウは逃げるように走り出す。


 りんごは見ていた。

桃子の家のポストに何かを入れているところを


「待って桃子。」


そういって呼び止めると


「なんで? 逃げちゃう!」

「そうじゃなくって」


りんごはポストを開ける。

中には携帯と少し汚い字で桜井桃子様と書かれた白い封筒が入っていた。


「なにこれ?」


携帯は以前さらわれた時のまま電源も切れていた。


「多分リュウが入れてったんじゃないかしら、さっきポストに手を入れていたから」


封筒を桃子に渡すと軽く留められた口を開け中の手紙を取り出す。




『桜井桃子様

 先日の誘拐事件の際は大変申し訳ありませんでした。みんなに久しぶりに会えて数年ぶりに生きているという感覚に出会えました。さようなら』




という短い文章だけだった。


「どういうこと?」

「さあ?」


二人は頭を抱える。


「これを届けるためだけに警察に追われているのに出てきたの?」

「それよりもさようならって……」


りんごはまさかと思い携帯を取り出す。


「もしもし?」

「あ、兄さん。あのね」

「一日に何回も電話して来ないでくれ。今日はやばいんだよ。」


そういわれ切られた。


「何回も電話?」


りんごは身に覚えのないことに首を傾げる。


「杏さんに連絡したの?」


桃子が不思議そうにりんごを見ながら聞く。


「うん…でも一日に何度も電話されても今日は困るって言われちゃった。」

「そんなに電話してたの?」


りんごは首を横に振り


「メールすらしてないわ。何勘違いしてるのかしら」


仕方なく携帯をしまう。


「リュウを捜して手紙の意味を聞きましょう。なんか反省しているみたいだしさらわれる心配はないだろうから」

「そうだね。」


桃子は一旦家に入り買ってきた荷物を適当に冷蔵庫に詰める。


「ローファーじゃ、走りにくいでしょ」


そういうと大きな下駄箱から箱に入った靴を出す。


「りんごなら履けるんじゃない。身長あるし、もらい物であたしサイズ合わないの」


そういって運動靴を渡される。


「ありがとう助かるわ。」


桃子の見立て通りりんごの足に靴がぴったりはまる。


「よし、行こう!」


と桃子がリュウの走り去った方向に向かうためそれを追いかける。


 リュウのいなくなった方向にはリュウが町に居た頃の家であるプレハブ小屋がある。


「多分あそこだよね。」

「人気もないし、姿を隠すにはちょうどいいと思う」


それは建設途中で中断され放置された遊園地。

そこにプレハブを建てて石田親子は暮らしていた。

何度か警察に注意されていたがそのたびに双子の父親が警官をなだめて帰ってもらっているのを遊園地で遊びまわりながら見ていたことがあった。


 汗を掻きながら走ること十数分、もう取り壊された平地にポツンとプレハブが建っていた。

だが、それの前には


「吾のお父さん?」


らしき人物。


「何でここに?」

「一カ月ほど前から町に帰って来ていたみたいよ。」


りんごはゆっくりと歩きだし吾の父親の前で止まる。


「聞きたいことがあります。」


そういうと吾の父親は昔よく見た優しい顔で笑ってくれた。


「りんごちゃんと桃子ちゃんか。大きくなったな。それに綺麗になった。……立花さんのところの蜜柑ちゃんと果鈴君の誘拐事件の時の話が聞きたいんだね。」

「はい。」


りんごの隣に桃子が並ぶ。


「私はあの日もいつも通り仕事がどうしたらうまくいくのか考えながら歩いていた。そこで見たんだ。」







 見たのだ。

友人であった石田の車を、それにはもちろん彼が乗っていた。


「こんなところに止めると通行の邪魔になるんじゃないか?」


運転席から降りてきた彼に声をかけた。

すると彼は驚いた顔をして凝視してきた。


「お願いだ! 見なかったことにしてくれ。じゃないとリュウともう一緒に暮らせなくなるんだ……」


泣きながら彼はそういっていた。

理由を聞いた。


「立花さんに生活が困窮しているのであればリュウは児童施設につれていった方がいいのではないかと言われたんだ。給食費も払えない。月末にはまともに飯も食わせられない。衣食住何も満足なものを与えられないのならその方がリュウのためになるって」


彼は私の肩を強くつかみながら言った。


「家だって似たようなものだ。そんなに思いつめるな。これから二人で考えよう。」


そう言ったのだが


「ダメなんだ。これを成功させれば金が入る。そうすればリュウと一生一緒にいられるんだ。」


少し狂ったように自分に笑いながら彼は言った。


「何を成功させるんだ?」

「……誘拐だよ。」


彼はさらに強く私の肩を掴む手に力を込めた。


「誘拐⁈ 犯罪だぞ! それで捕まれば本当にリュウ君と離れ離れになってしまうじゃないか!」

「いいや、失敗しないさ。だってこれは立花さんが建てた計画で誘拐するのは蜜柑ちゃんと果鈴君なんだ。」


私は驚いて声がでなくなった。


「な、なぜ立花さんが自分の子供を誘拐させるんだ? 狂言をして何になる?」


私は彼の肩を掴んで揺するも狂ったような笑いが止まることは有りませんでした。


「あの子達を誘拐して殺して捨ててリュウとこの町から消える。」

「聞きたいところはそこじゃない!」

「あの子たちは立花さんの子供じゃないんだと……そんなことで今まで育ててきた子をよく殺せ何て言えるよな。まあ、俺も子供のためとか言ってるけど犯罪者なんだよな……」


私は怖くなってその場を逃げました。

あそこで彼を止められていたら私も、彼も、子供たちもこんな思いをしなくてすんだでしょうに…


 何度も警察に行くべきだと考えました。

ですが彼は本当にリュウ君と一緒に居たいだけなのです。

そんな彼を自分に重ねてしまったのでしょう。

私もこれ以上借金で家族を苦しめるのは嫌でした。

お金が、大金が入るのなら犯罪に手を染めていたかもしれません。






 吾は驚きのあまり声がでないでいた。


「それには何が書いてあった?」

「中身を知らないんですか?」


ゆすらは吾の義父に聞く。


「知らない。時効が来たら開けてくれと言われていたが、私が見ていい物ではないと思っていたからね。」

「待ってください。これは双子のお父さんが取り調べをしたって言ってましたよね?」


話が合わない。


ゆすらはたくさんの歯車がかみ合わずに勝手に動いていることが不思議でならなかった。



「そうだ。立花さんか直接万田さんを取り調べて作成した物だ。」

「おかしい」


それまで黙っていた吾が口を開く。


「見てください。これには双子の誘拐をリュウのお父さんに頼んだシーンもその理由も殺意も書いてあるんですよ。」

「おそらくそれが左遷にあった理由だろう。」


吾の義父は冷静に分析する。


「自分で自分の罪を告白したつもりがだったんだろう。生き地獄に行く破目になってしまった。あの人はそうも言っていた。」


それはまるで自分が罪に問われることで妻に何か伝えたいような思いが感じられる。


「それじゃあ双子のお父さんは捕まるつもりだったが、警察のお偉いさん方はそれを許さなかった。そういうことですか?」


ゆすらが聞く。


「だろうね。警察は上の人間になればなるほどスキャンダルをもみ消そうとするからね。」


 「蜜柑のお母さんに会いに行こう。」


吾がいきなり言い出しゆすらは言葉を理解できずにいた。


「いきなりなんだ? 話が飛び過ぎなんだよ。一から十までの間で三から五まで言ってからいきなり十に飛ばすような話をするな。頭の中だけで完結させる前に口に出せ!」


ゆすらがすごい形相で吾に迫るため吾は若干引く。


「ごめん……で、会いに行こうと思う理由なんだけど、まず、多分不謹慎だろうけど本当に双子が父親と血がつながっていないのかを聞くため、あと蜜柑のお父さんにコンタクトを取る前に事件についておばさんはどんな形で受け止めているのかを聞きたいから」


吾をじとっとした目でゆすらは見る。


「それだけ?」

「それだけ……」


ゆすらは溜息をつきながら携帯を取り出す。


「りんご達にも今の事伝えよう。」


耳に当てしばらくコールが鳴るもブチッと出ることなく切られてしまう。






 りんごは鳴り出した携帯の終話ボタンを押す。


「出なくていいの?」

「ゆすらからだからいい。」


ポケットに戻してからりんごは話を進める。


「なんでおじさんまで町から居なくなったんです?」

「始めは誰にも言わずにいたんだ。だが取り調べの後に立花さんから大金が送られてきた。それを見て、このままこの町で過ごすのは危険だと思ったんだ。母さんにも吾にも事件のことは一言も話していないのは立花さんも知っていたから私一人姿を隠せば家族に危険はないと思ったんだ。」


プレハブの階段に座り込む。


「その中にリュウが居るんですか?」

「いる。だが、いないようなものだ。」


いっている意味が解らない。

そんな顔をすると


「もうすぐ石田も町に来る、そしたら警察に私が責任を持って連れて行くよ。」


そう言ってプレハブのドアをノックしてから立ち上がり歩いて行ってしまった。


 それを見送ってから桃子はりんごに


「いるようでいないってどういうこと?」

「さあ、でも中に何かあるのは確かよ。」


りんごは吾の父親がしたようにノックするも返事はない。


「リュウ、いないの?」


聞いたところでやはりない。


「開けるよ。」


桃子がドアノブを掴み回す。


鍵はかかっていないようですんなり開いた。


だが


「……!」


声にならない驚きと鼻に衝く匂いが中から溢れてくる。


「何、これ……」


口と鼻を手で押さえるも匂いが指の隙間から入ってくる。


「ゔっ…!」


吐き気に急いでドアを閉めた。


 その様子を離れて見ていた捜査官の一人が二人に近寄る。


「どうかしましたか?」


顔色の悪い二人にさらに捜査官が出てくる。


「中に……」


吐き気で声も言葉としては出しにくい。


「中?」


二人の様子から捜査官はハンカチを口に当ててからドアを開けた。

辺りに腐葉土や腐卵臭、ゴミ捨て場の匂いが混ざった言葉でうまく表現しにくい香りが充満する。


「こりゃすげえな……」


慣れているのか捜査官は一旦ドアを閉めた。

驚きはしたもののいたって冷静に


「本庁に連絡してくれ。死体が出たってな。こりゃあ、結構前に行っちゃてんな。この夏の熱さで臭いは増してんだろう。その子たちは車で休ませて花傘さんにも着てもらえ」


女性捜査官にりんごと桃子を近くに停めてあった車に誘導される。






 その知らせは署長である吾の義父のもとにも届いた。


「今来客中だ。」


ドアをノックして入ってきた部下にそういうも


「申し訳ありません。ですが先日病院から誘拐された女子高生二人が死体を発見したと連絡がありまして」

「りんごと桃子が⁈」


その知らせにゆすらと吾が驚き立ち上がる。


 それを見て


「彼女たちは?」

「はい、現在はまだ現場の近くに、車の中で待機してもらっているとのことです。」

「この子たちを案内してやってくれ」


その言葉に部下の人は驚いた顔をしつつも二人を案内する。


「夕飯までには帰ってくるんだぞ。」

「父さんもね。」


と吾が言って部屋を出た。


 車に乗り数分。

現場である遊園地跡に到着する。


「君達の友達はあの車に乗っているはずだ。」


そういわれその車に近づく。

窓ガラスをノックすると


「ゆすら?」

「こんなところで何してんだ? しかも死体見つけるなんて」


窓を開けてりんごが話しかけるとゆすらは呆れた声で話す。


「リュウを追ってきたのよ。そしたら吾のお父さんが居たの。」


桃子がりんごの膝に手をついて窓から見える位置に顔を出す。


「リュウ?」

「そう、リュウが桃子の家に手紙を届けに来たからその後を追って、というよりは当たりを付けてここに来たら遭遇したってところね。」


りんごがドアを開けて出てくる。

桃子もりんごが居なくなった席を横に動いて出る。


「で、死体ってのは誰のだ?」

「解らないわ。まあ、吾のお父さんやリュウのお父さん、リュウ本人ではないのは確かね。」

「なんでだよ?」


吾が首を傾げる。


「リュウのお父さんの可能性はあるだろ?」

「おじさんが言ったのよ。リュウのお父さんがもうすぐこの町に来るから見つけたら連れて行くって、それを話した本人が死んでいるわけないし、リュウはついさっき見たんだからあんな死体になっているわけないわ。」


顔色の悪いまま状況を説明する。


「あんな死体って…まさかばらばらとか?」

「お前、本の読み過ぎだ。」

「悪かったわね。」


りんごが答える。


「死んで何日も立っているって感じね。この夏の熱さで臭いが増しているとか言ってたわ。」

「ミイラ…」

「ほぼ白骨死体よ。」


吾の意見はことごとく切り捨てられる。


「でも死臭って始めてだけど鼻が落ちるかと思った…。死体の状況も最悪だし」

「人間は雑食でいろんなものが体内にある。しかも脂肪はどの生物よりも不味い。内臓は体内で一番始めに腐り出し口やケツの穴から匂いや液体が出てくるからさらに匂いが増すんだ。首つり死体の方がミイラになりやすいらしい。」


説明をするゆすらに視線が集まる。


「なんでそんなこと詳しいの?」

「いや、医学書とか読まされたから……」


もう何も言いません。

そんなふうにゆすらは黙ってしまう。


 そこに一台の赤いランプを灯した乗用車が来る。


「あ、兄さんが来た…」


さっきは電話も出られないとか言っていたのにと言いながら四人は杏の車に近寄る。


「お前、誘拐の次は死体を発見するって、どこの探偵漫画の主人公だ。」

「仕方ないじゃない。兄さん忙しいって話も聞いてくれなかったんだから」

「くだらないことで何度も電話してきたからだろ!」

「電話なんて今日はあの時が始めてよ!」


りんごと杏が兄妹喧嘩を始めるとそれをただ見ているだけの三人は


「にしても今日は暑いわね。九月入ったんなら気温下げなさいよね。」

「秋まではしばらくあるからな。それより桃子、その格好で学校行ったんだよな?」

「そうよ。」

「席の周りが人だらけになってたよ。」


と話し出す。


 そこにりんごが


「ゆすら、桃子、今日わたし電話してることあった?」


と聞いてきたので


「リュウを見つけたって知らせようとして杏さんに切られたところしか見てないわよ。」

「そもそも学校で携帯見ている暇なかっただろ。テストもあったし、時計も腕にしてるからな。」


ゆすらと桃子は言う。

ふと、りんごはゆすらの腕時計がないのに気が付くもそれは今はどうでもいい、


「見てよ。知らない発信履歴がこんなにあるの」


画面を見せながらいう。


 そもそも朝は女子生徒にイメチェンについて聞かれていたため電話なんてできない。

ホームルームが終ってからは集会に始業式と続いているため携帯は教室。

その後の学力テストはもちろん電源を切っている。

桃子との待ち合わせ中は


「そういえばあの時はディスプレイを見るだけで操作はしてなかったよな。」


桃子より先に学校を出てゆすらと待ち合わせをしていた吾はりんごに気が付き見ていたという。

それには桃子が嫌な顔をするも抑える。


桃子の家に言ってからは一度も携帯を見ていない。


「じゃあなんでこんなに発信履歴があるんだ?」

「私が聞きたいわ。これでわかったでしょ。私、今日は一回しか電話してないの。」


携帯を見ながらりんごは考える。

蜜柑や果鈴の電話番号やアドレスが登録した覚えもないのに入っていた。


それと同じでりんごの知らない間に誰かが、蜜柑や果鈴が操作しているのだろうか?


 「それより、兄さんは事件の捜査できたんでしょ、いかなくていいの?」


りんごは本題に話を戻す。


「ああ、あの死体は多分餓死だ。外傷は見当たらない。今あの中に身元を示すものはないか探しているところらしい。」


今着たばっかりというのによく知っている。

視線でそれを伝えると


「逐一無線で知らせをもらってたんだよ。お前等の事情聴取は明日にするからもう帰れ。」


と言われるものの


「仏さんの身元解りました。石田リュウ十五歳。学校には通わず年齢をごまかしてアルバイトをしていたみたいです。通帳では三か所から入金があります。でも一年以上前から入金か途絶えて、最後に引き出したのが去年の四月ですかね。それで残金がゼロになってます。」

「おいおい、それじゃあ報告の仏さんの状態と違うじゃねえか。どっかで拾った通帳かもしれねえし、別のもの探せ。」


杏の指示で鑑識と思われる男は現場に戻って行った。


「リュウ?」

「しかも半年以上前に死んでる⁈」

「何かの間違いよ。だって、リュウはさっきまで」


生きていた。


そのはずだ。


だが四人は思う。


リュウまでもが蜜柑や果鈴のように幽霊となり自分等の前に現れていたとしたら、今までのリュウが関わっていたことにも理由がついてくる。


 「リュウは金がなくなったからりんごを殺害して俺やあの人に身代金を要求するつもりだったのかもしれないな。それに二十代の男と女子高生が絡んでいるのか。面倒だな。」


そういいながら現場に向かって歩き出した。


 「一先ず桃子の家に帰りましょう。そこで話をまとめてからリュウを探す計画をたてて」

「蜜柑と果鈴にも聞いてみないといけないだろうからな。」

「そうね。とにかく行きましょう。暑くてもう耐えられない。」


三人は納得して歩き出すも


「待って、なんで桃子の家なんだよ⁈」


と吾が言い出す。


「私の荷物のほとんどが置いてあるからよ。」


りんごが答えるとそうではなく


「おばさん妊娠してるんじゃないの?」


とこの人数で押しかけていいのか心配するも


「今入院中だから平気。出産まで病院。お父さんが今日楓を迎えに行ってくれるみたい。」


桃子の家の事情を知っていた吾は余計なおせっかいだったととぼとぼ三人の後についてあるきだす。


 道中吾の父親と義父から聞いた話をお互い言い合い全く同じだったことに溜息を漏らす。


「こんな事隠すんじゃないわよ。」

「でも、リュウのお父さんの言い方だと協力者は双子の父親だけになるわ。私を殴ったのは誰だったのかしら。もし、誘拐されている子供を見つけたら真っ先に助けるものよね?」


それは桃子の家に入っても続けるつもりだったが


「桃ちゃん、チューペットは冷蔵庫じゃなくて冷凍庫に入れる物でしょ!」


と柊が玄関まで走ってくる。


「あ、ごめんごめん。急いで出かけたから適当に冷蔵庫に押し込んじゃって、でも数時間じゃ凍らないから、それは明日にしなさい。椿は?」


「お父さんと楓迎えに母さんのところ行った。留守番してたんだからなんか頂戴!」


十歳の男の子に駄々をこねられる桃子は疲れた顔で


「夕飯のエビフライ一本多くしてあげる。でも野菜は残さず食べるのよ。」

「やったー!」


と喜びながらリビングに戻って行った。


「下の兄妹いいな。」


りんごが言うと


「可愛いもんな。」


と吾がのる。


「うるさいだけだろ。」


とゆすらがいう。


「そういえば万里(まり)ちゃんと楓が同じ幼稚園みたいね。」


桃子から新しい情報が入る。


芒目(のぎめ)って苗字になったんだな。義父さんのデスクに名札があった。」

「お前等俺の情報をどんどん出すな。」

 そこに玄関が開く。玄関から上がらずに喋っていたため鉢合わせすると


「あ、すももちゃんのお兄ちゃんだ!」


とゆすらを見ながら椿がいう。


「……なんでこうもみんながみんな同級生なんだよ。」


ゆすらはつい朝まで家に泊まっていた椿を視線から外していう。


「あたしの時は同級生の親との交流をしてないから母さん見ても解らないのか…」


桃子の苦笑いの状態でみんなを家に上げた。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ