お見合い?
少し時間を遡る。
時は、パトリックが王に対して、「マジで?」と言ってしまい、土下座した一時間後。
王城の一室に、パトリックととある女性が紅茶を飲んでいた。
「改めまして、パトリック・フォン・スネークスです」
「ソーナリス・メンタルです」
自己紹介もそこそこに、
「で、何故私なんです? お世辞にも男前では無いし、家柄も良くは無い。それどころか、謀反に参加した家の出身だ。しかもその親兄弟を殺した、いわば残虐な男です。極め付けに存在感すらない」
パトリックは、素直に聞いてみた。
「私は、先の反乱後の式典で、初めてパトリック様をお見かけしました。端の方のテーブルで、お1人で食事をなさっていました。あのような大人数での式典なのにもかかわらず、お1人というのは、私には大変目立ちました」
ここでパトリックは思う。
あの時、戦闘中では無いので、それほど存在感を消していたわけでは無い。
だが、普段よりは消していたはずである。なにせ人付き合いは苦手なほうなので、極力見つからないようにはしていた。
なのに、見つけた?
「それまで寂しそうなお顔でしたが、近衛のカナーン達が声をかけてから、少年の様な笑顔をされて…」
確かに笑っていただろう。
パトリックが心を許す、唯一の家がカナーン家だ。
「後は、先日中庭で、私がわざとぶつかったのに、貴方は自分の非を先に謝罪されました。王女とは分からない服装をしていた、小娘に対してです。手を取ってもらった時、心臓が高鳴って倒れそうでした!」
と、ニコニコ笑う。
パトリックとしては、確実に腕輪を見ていたため、余所見していたのは、間違いなく、素直に言っただけなのだが。
恋は盲目とは、この事か。
パトリックは、
「私の事は陛下からお聞きとは思いますが、かなり捻くれた人格であると思います。それでもよろしいので?」
と、聞いてみた。
すると、
「他人と同じ様な方など、面白味が御座いません。私は自分の直感を信じます!」
と、宣言されてしまう。
その目を見て、パトリックは、まあいいかと思った。
途中で嫌われたなら、婚約解消すれば良い事だと。
「では、よろしくお願い致します」
パトリックが頭を下げると、
「はい! 私こそ変わり者の王女ですが、よろしくお願い致します!」
と、頭を下げた。
ん? 変わり者?!




