兵士のお仕事4
「了解です!」
トニーは両手剣を抜き、トロールの首へと剣を振り下ろす。
何度か振り下ろすと、ようやく首が胴体から離れた。
「皆、怪我は?」
パトリックの声に、
「擦り傷や打撲程度で、重傷者は居ません。」
「よし! ウェインは平気か?」
「ああ、助かったぜ、小隊長殿!」
半分笑いながら、ウェインが応える。
「しかし王都の近くで、トロールに出くわすとは、俺たち運が無いなぁ」
パトリックの言葉に、全員が頷く。
「とりあえず、トロールの首は持って帰って、報告する! 撤収準備だ」
《了解》
「以上で報告終わりであります! 大佐!」
パトリックが言うと、
「ご苦労! 後はこちらで調査する、戻って休みたまえ」
ハゲた頭と樽の様な体の青い眼の男が答えた。
「はっ! 失礼します」
敬礼してパトリックは退出する。
「近くの森でトロールとはな。どう思う?」
「嫌な感じですなぁ、はぐれなら良いんですがね、リードン大佐はどう思われます?」
「はぐれなら、良いのだが、斥候だと厄介だな。トロールは普通三体ぐらいで行動するだろう? 最悪、後2体は潜んでいるかもしれん」
「調査にどのくらい出しますか?」
「移動用バリスタを持たせて、一個中隊だ。どの隊を出すかは、任せる」
「はっ! 直ちに!」
戻ったパトリック達は、トロールの首を持って報告し、疲労に負けて泥のように眠った。
次の日、兵舎の大騒ぎでパトリックは目を覚ました。
「早くタンカ持って来い!」
「包帯はまだかっ? 早くしろっ!」
「しっかりしろっ! 意識をしっかり持て! 寝るなっ!」
怒鳴り声と走り回る足音。
個室から出て、音の方に向かうと、担架に載せられた兵士が、救護室に向かう所だった。
「おい、何があった?」
パトリックは近くにいた上等兵を捕まえて、質問すると、
「調査に出た一個中隊が、トロール2体と遭遇、戦闘により殲滅いたしましたが、負傷者15名、うち重傷者3名であります。さきほど帰還致しました」
そう言い、去っていった。
(あの後すぐに調査に出たとして、到着は夕方? 夜戦をしたのか⁉︎ 指揮官は誰だ? いくら足の遅いトロールでも、夜戦はマズイだろ! 2体って言ってたな? 挟み撃ちされたらどうするつもりだったんだ?)
トロールの足は遅くとも、夜の森は人ではとても走れたものではない。走れば捻挫確定である。石や枝で簡単に足首を捻るからだ。
歩くとなると、歩幅の広いトロールの方が速い。
故に森の中では、昼戦がセオリーだ。
(軍事講習で習っただろうに。功を焦ったか? それとも野営中に襲われたか? 今更言っても仕方ないか。)