少女
パトリックは、腕輪を手に取り、よく見る。
「なるほど、ここが開いて、腕に装着する感じか、着けてみるか」
カチャンと音を立て、パトリックの左手首に、腕輪が装着される。
と、隙間があっという間になくなり、ピッタリと腕に固定された。
不思議に思うパトリックだが、
「これ、どうやって外すの?」
先程開いた部分が、無くなっていた。
「まあ、いいか。貰ったものを着けてても、問題無しだ」
軍事以外は、ほとんどお気楽な考えの持ち主であった。
パトリックは軍の兵舎に帰ろうと、ベンチを立ち腕輪を見ながら歩き出す。
ドンと、何かがぶつかってきた。
「キャッ」
と、少し高い声がし、少女が尻餅をつく。
「ああ、申し訳ございません。余所見をしておりました。お怪我は御座いませんか?」
パトリックは、尻餅をついた少女の手をとり、立ち上がらせる。
年は12歳くらいだろうか?
細い身体に、金髪のショートカット。青い瞳の少女。
着ている服はこの世界では少し異質だが、高級感が漂う。
「い、いえ、わたくしの方こそ、余所見を。失礼しました」
「お怪我が無いようで安心しました」
「はい、大丈夫です」
「では、私は失礼いたします」
パトリックは、会釈して立ち去る。
後に残された少女は、パトリックの後ろ姿を見て、
「フフ」
と、にこやかに笑った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
王の私室のドアが、バタンと開く。
「お父様!」
入ってきた少女は、元気いっぱいの声で、王に呼びかける。
「ソナ、入る時はノックしなさいといつも言ってるだろう」
王を、お父様と呼んだ少女に、王は優しく叱る。
「はい、ごめんなさい。でも! 聞いてください! 今日、中庭を散歩していた時に、あの方とついにお話できました!」
「あの方?」
「もう! 前に言ったじゃない! 式典の時に、素敵な殿方を見つけたと!」
と、言われ、王は思い出す。
「ああ、なんか言っていたな。式典には、多くの貴族や軍人が来ていたから、誰か解らないとか言ってたが、今日は外からは、数は来ていないはずだな。誰かわかるかも知れん。その男の特徴は?」
と、王に聞かれた少女は、
「えっと、年は16歳くらいかな? 服装からして、軍人貴族当主。黒い頭髪と、黒い瞳でぇ…」
と、言われたあたりから、王の頭の中に、1人の男が思い浮かぶ。
「左の腕に、蛇の腕輪してました!」
と言われて確信する。
パトリックだな
と。
ようやくヒロイン?の登場。




