赤い死神
キング級が居なかったので、ある程度順調に魔物を倒して行く国軍。
もちろん無傷では無い。
負傷者多数、死者も出ている。
だが、1番の激戦区は、サイクロプスと戦っている兵達だ。
サイクロプス1匹ならまだ良かったのだが、5匹も居るのだ。
矢で目を狙うのだが、サイクロプスもバカでは無い。
目が狙われるのは解っているので、絶えず片手で目を隠すようにし、デカイ図体で走り回る。
当たれば大怪我確定である。
2軍のエースとなったウェインは、部下を指揮しながら、サイクロプスと渡り合う。
「てか、ウェインの奴、もはやバケモノだな。サイクロプスとタイマンとか、人辞めてるだろ」
ウェイン1人でサイクロプスを抑えながら、部下の指揮で、もう1匹を抑えさせているのだ。
槍の動きが見えやしない。
見る見る傷付き血を流すサイクロプス。
他の腕利き達も、サイクロプスを数人がかりで押し気味である。
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とあるサイクロプスは、見えない敵と戦っていた。
何も居ない。居ないのに傷が増えるのだ。
サイクロプスは思う。俺は何と戦っているのだと。
闇雲に腕を振り回すが、空を切るだけ。
足元に何かが居る訳でも無い。
なのに、傷が増えていく。
(ヤロウ動きすぎだろ)
パトリックは内心ビビっていた。
サイクロプスの腕が当たれば、パトリックの体型では即死だ。
闇雲に振るう腕がかするだけで大怪我だ。
紙一重で全てかわしているが、かわすしか手が無いのだ。受けでもしたら、腕は骨折ですまないだろう。
かわして斬りつけ、下がっては突入を繰り返している。
鉈剣から刀に持ち替え、斬れ味重視で関節の裏を狙う。膝の裏ですらパトリックの頭の位置なので、狙うのは膝の裏とアキレス腱しかないのだ。
何度か斬りつけ、ようやく右脚の膝の裏の腱の切断に成功する。
膝をついて、ようやく脇腹を狙えるようになった。
斬り裂いた脇腹から、サイクロプスの腸が飛び出る。
その腸をパトリックが握りながら猛スピードで離れると、ズルルッと腸が引き出される。
それを阻止するように、サイクロプスは両手で脇腹を押さえる。
ようやく目が空いた!
パトリックは、矢型手裏剣で目を狙う!
ブスッと手裏剣が目に刺さる。
吠えながら手を、目に刺さった手裏剣を抜く為に移動させるサイクロプス。
また腸を引っ張るパトリック。
目から脇腹からの出血。
吹き出る血を全身に浴びるパトリック。
腸を切断すると中から食べたものが溢れ出し、異臭が漂う。
痛みに地面を転がり回るサイクロプス。
ようやく首に斬りつける事に成功する。
噴水の様に血が飛び、辺りを血の海に変える。
「流石死神」
誰がが呟いた。
「赤い死神!」
誰かが叫んだ。
ウェインもサイクロプスを倒し終え、腕利き達も2匹を倒しており、残るはあと1匹。
ウェインの部下が抑えていたサイクロプスだ。
パトリックはサイクロプスの手が目から離れた瞬間に、手裏剣を投げる。
1発で刺さった手裏剣。
ウェインや腕利き達が、一斉にサイクロプスに向け走り出す。
パトリックは周りに目をやる。
どうやら終わりが見えたようだ。
ドスンと、大きな物体が倒れる音が響いた。




