兵士のお仕事2
森の奥へ歩く事30分、
奥から、物音や鳴き声が聞こえた。
「止まれ! ウェイン軍曹の分隊は右側へ、トニー兵長の分隊は左側へ、ミルコ伍長の分隊は俺と共に中央からだ。いいな?」
全員が頷く。
「ウェイン分隊とトニー分隊は、時を合わせろ移動開始から五分後に突撃だ」
そう言い、手のひら程の大きさの道具を出す。時の魔道具だ。
「では、行動開始!」
ウェイン分隊とトニー分隊が移動していく。
この世界、1年360日の12カ月、一月30日の1日24時間、1時間60分だ。
ちなみに太陽暦で、月は2つある。
閏年はない。
時の魔道具は高価であるが、軍務上必要なので、分隊長以上には支給されている。
「行くぞ」
パトリックは茶髪で短髪、青い瞳のミルコ伍長に声をかける。パトリックより10歳ほど年上だろうか。細身の渋い男である。他の2人もゆっくり静かに前進する。
少し開けた場所で5匹のゴブリンが、子鹿の腹をブチまけ、内臓を貪っていた。
「弓用意…」
全員が静かに弓をかまえる。
ゴブリン狩りの定番だ。
「放て!」
ヒュンという音と共に、矢が放たれる。
ほぼ同時に、左右からも矢が放たれた。
グギャ
ゲゲッ
ピギャ
外側に居た三匹に矢が刺さる。
致命傷では無いので、呻き声を上げながら転げ回るゴブリン。
子鹿の死体から顔を上げた残りの2匹は、周りをキョロキョロする。
「2射目、用意できた者から、順次放て!」
他の分隊にも聞こえるように大声で命令する。
ヒュンヒュンと、矢が飛び、2匹のゴブリンに命中する。
「各員、警戒しながらトドメを刺しにいくぞ!」
「了解です!」
「はいっ!」
と、木々の中から、隊員たちが動き出す。
各自が弓から槍に得物を替え、のたうち回るゴブリンの首や心臓を突き刺す。
完全に沈黙したゴブリン5匹。
「首を切り落としておけ! 放置すればゾンビ化するぞ! 討伐証明の鼻だけ確保しておけ!」
ウェインが隊員達に命令する。
その光景をさらに奥から見ていた生き物がいる事に、ウェイン達はまだ気がついていない。