宴
話は、式典の直後の事。
式典が終わり、今回の戦で手柄有りで、褒賞された者達が、王城へと移動する。
宴にはほぼ全ての貴族当主や、軍の高官が出席するので、下級兵にとっては、苦痛な行事ではあるが。
ただ、今回少尉以下の者は、数が多過ぎるので、出席はしない。
パトリックとウェインは、宴が開かれる、城の中庭に居る。
勿論他の出席者も。
形式は立食。
ここで、爵位の低い者や軍属は、上位の者との面識を取り付けるのが普通だ。
貴族はより上の者との繋がりを、例えば派閥などに加入して、地位の安泰を。
軍属ならば、後ろ盾を。
ウェインの場合、中尉となったが、立場は、男爵家の息子。
跡取りでもないので、後ろ盾など、ほぼ無いに等しい。
それほど男爵家というのは、力が無いものなのだ。実家のキンブル家は、武家の貴族で、全員軍属ではあるが、当主ですら、大尉。
ウェインの1つ上なだけである。
母の実家も男爵家で、こちらの当主は中尉。
軍内部でも、力がある訳でも無いのだ。
しかし、ウェインの周りには、人集りが出来ていた。
貴族当主は、基本、妻や娘も連れてくる。
ある意味、集団見合いの場が、宴なのだ。
ウェインの容姿は、飛び抜けて良く、実力もかなりのモノ。
子爵家や男爵家の次女三女は勿論、息子の居ない家などは、長女の婿に、武家の血を取り込もうとしているのだろう。
まあ、娘達が乗り気なのは間違いなく、積極的にアピールしている。
居場所がないパトリックは、ウェインから離れ、1人で飯を食べていた。
何せ存在感が無いので、誰からも話しかけられないからだ。
ウェインが居る方向からは、華やかな女同士の足の引っ張り合いが、絶妙なバランスで繰り広げられていた。
そこに、とある美女の登場。
「ウェイン・キンブル君、少しいいかな? 我が娘を紹介したいのだ」
と、一緒に現れたのは、サイモン中将。




