53/316
逃走
士官や当主が、そそくさと荷物をまとめ出した。
それを見た兵達も、事態を把握する。
(逃げる気だ)と。
士気が崩れた兵というのは、非常に脆い。
そして、1人でも逃げ出す者がでると、伝染病のように広がる。
「逃げる奴はほっておけ! 狙うは反乱当主と、帝国軍幹部だ! 逃すなっ!」
サイモン中将の指示に、兵達は馬車に狙いを定める。
特に貴族は体力の無い者が多い。
軍に所属する貴族は別だが、領地に籠っている貴族の運動量は、屋敷の中の移動のみ。
出かける時は馬車か馬だ。
次々と馬車は抑えられる。
馬のみで逃げる兵には、矢を放たれる。
裏門は王国軍が抑えているので、逃げるなら正門だ。
だが、正門は閉じられている。開いてるのは、脇の通用門。
馬車がようやく通れるくらいの、小さな門だ。
そこに、徒歩で逃げる兵たちが駆け寄るものだから、馬の通る隙間は無い。
が、帝国軍の幹部達は、帝国軍兵すら、馬で蹴散らしながら、門を通過した。
蹴散らされ倒れた兵の上を踏みにじり、さらに馬が出て行く。




