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忍び込む
馬車は走る。西の砦の正門に向けて。
「いいな! 余計な事を言わなければ、お前は国に帰れる。言えばその時がこの世との別れだ」
パトリックが言うと、
「はいっっっ!」
と、商人が怯えて言う。
「次!」
門の所の兵が、一台の馬車を呼ぶ。
「中身は?」
兵の問いに、商人が、
「小麦と塩と干し肉でございます」
「一応中を確認する!」
「はい、お願いします」
商人は内心思っていた、ここで自分が言わなくても、中に隠れているのが兵に見つかれば、自分は助かるのではないかと。
「異常なし! 行っていいぞ!」
が、その淡い期待は砕かれたようだ。
仕方なく馬車の中に戻る商人。
ゆっくり進む馬車。
「よし、後は、適当に行くとして、お前たち3人はこいつと一緒に砦を出て、元の場所で待機しててくれ」
「それでは少尉が危険では?」
と言ったのはミルコ伍長。
「1人ならいくらでも隠れられる」
「まあ確かに」
「あと、こいつが密告しないように見張ってろ」
「了解です」
「では、行動開始だ」




