ノリノリ
どれほどの時間が過ぎたのか。30分か1時間か。
はたまた2時間以上なのか。
馬車から解き放たれた馬が帰ってきた。
よく訓練された馬は、自分で馬車に帰ってくるという。
「そろそろ飽きたし、もういいか」
パトリックはそう言い、マイクとマリアンヌの首を、あっさり斬り落とした。
首を馬車に放り込み、3人に声をかける。
「この馬車、食い物いっぱいあるぞ。ここでメシにしようぜ」
顔から血の気の引いた3人と、ご機嫌なパトリックの対比が凄まじい。
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「アレはリグスビー男爵家の馬車か? なぜ止まっている? 故障か? 御館様! リグスビー家の馬車が止まっております! いかがいたしますか?」
カーリー男爵を乗せた馬車の御者が、中に声をかける。
リグスビー家の馬車の横に、カーリー男爵家の馬車が止まる
「リグスビー男爵家とお見受けする、こちらはカーリー男爵家。いかがなされた? 故障か?」
カーリー男爵家の御者が、リグスビー男爵家の御者に、声をかける。
「おお! 良いところに! 故障で難儀しておったのだ!」
やはり故障かと、カーリー男爵家の御者は、中にむかって、
「故障のようです!」
と、声をかけたが、返事がない。
不審に思って、もう一度、
「故障のようです!」
と、大きめに声をかけるが、
「うるさいなぁ、中の人が起きたら、どうすんだよ! まあ、永遠に目覚めないけどなぁ!」
と、返ってきた声は、上機嫌で若々しい声であった。
御者の聞いた最後の声だった。
「上手くいきましたが、緊張しましたよ! 私に演技とか無理ですよ!」
ミルコ伍長が言うが、
「ちゃんと騙せたじゃないか! 上手くできてたよ、この調子で他の家が通るのを待とう。リグスビー家があの時ならば、他はまだだろうと思ったけど、そのとおりだったし、ハーターとかも来たら潰しておこうぜ」
馬車が止まった瞬間に、パトリックは馬車に侵入、即座に中の人間の首を落としていた。
パトリックはフフフと笑った。
三人は背筋が凍る思いだったという。




