リグスビー男爵家
ウエスティン領のウエスティン邸より、慌ただしく、いくつもの馬車が走り出る。
行き先は西の砦。
ハーター子爵家、カーリー男爵、エージェー男爵家も同じである。
そして、リグスビー男爵家も。
「早くせんかっ! 王国軍はウエスティン領に入っておるのだぞ! ここは西の砦に入らねばならんのだ! もたもたして砦を囲まれた後では、逃げ込めんのだぞ!」
怒鳴る男。
リグスビー男爵家当主、マイク・フォン・リグスビー。
「なぜ我らが、砦に逃げねばならないのです? 我らは何もしてないと、突っぱねれば良いではありませんかっ!」
少しヒステリックに叫んだのは、正妻のマリアンヌ・リグスビー。
四十路のデブ、骨太の155センチほどのアゴの割れた女性である。
ちなみに、ミドルネームのフォンが付くのは、当主のみである。
「今更そんな言い訳が通じるかっ! 我が紋章の付いた鎧の兵が出ておる! 他の家も同じだ! 各個撃破されてはひとたまりも無い! この様な屋敷では、防御すらできんわいっ!」
「息子達は?」
「兵と共に先に出ておる! 我らは、食料や金を持って行く」
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「来たか、クソ親父…」




