褒賞
横になって考える。
(てか、やっぱ俺、元日本人だよなぁ。この世界でアキレス腱なんて聞いたこと無いし)
パット、本名パトリック・リグスビー。
メンタル王国、西の辺境の男爵家三男。15歳で成人のこの世界、家を継ぐ長男でも無い、予備、又は他家との繋がりに婿に出すのに使う次男。まあ、婿を取る様な家はあまり無いので、次男1人で充分なので、三男以降は需要がない。これが娘なら嫁に出すので、需要があるのだが。
で、三男パトリックは、成人と同時に王国軍に入隊。
だいたいの貴族の三男以降はこのパターンだ。
(リグスビー男爵家の長男と次男は正妻の子。俺は側室の子。まあ、家から追い出されたというのが、正しいわな。母親も2年前に病で他界してるし。しかしあの家カスの集まりだな。親父は領民から税取る事しか考えてないし、長男は偉そうな無能だし、次男はゴリマッチョな臆病者だし、正妻は宝石にしか興味ないブタだしな。
軍に入って罵る奴が居なくなって、良かった良かった。
俺だけ黒髪黒瞳だから、悪魔の子だとか細身だから、リグスビー家の血が入ってないとか、呪われた子とか、まあ言いたい放題殴り放題だったな。そりゃあんな家に居たら母親もストレスで、病気にもなるわな。
ま、日本人の記憶の方も、思い出したくないものばかりだし、兵士頑張って、のんびり生きてこう)
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「パトリック・リグスビーが目を覚ましました!」
ウェインが隊長に報告する。
「うむ、報告ご苦労! 下がって良し」
「はっ!」
「しかしあの新兵、パトリック・リグスビーでしたか。なかなか根性ありますな」
副隊長が、隊長に話かける。
「リグスビー家の三男だったか。期待はしてなかったが、なかなかやりおる。あの家、図体だけの根性無し揃いかと思っておったがな」
「たしか、長男も次男も三ヶ月もせずに除隊申請出したとか?」
「長男が一ヶ月。次男が二ヶ月だったかな」
「一ヶ月って、訓練終了すらしてないのでは?」
「ああ、野戦訓練中に、テントなんかで寝れるかと、逃げ出しおった」
「それはまた、なんと申せばよいか」
「次男も、訓練終了はしたが、実戦する直前に逃げた根性無しだからな」
「三男の爪の垢でも、煎じて飲めば良いのに」
「まったくだ!」
「パトリック・リグスビーの褒賞、どうされます?」
「今は、軍曹だったな?」
「はい、貴族家の出で、訓練終了時点で軍曹、が、基本でございますので」
「金貨5枚と、曹長に昇進で良いだろう」
「はっ! その様に致します」
「あとは、ウェインに金貨3枚、他の者達に銀貨10枚ずつで良いだろう」
「了解です!」
次、ちょっと説明回になるかも。