煙
王国軍の騎兵が突入した時、そこには王国軍と裏切ったウェスティン領軍、帝国軍が入り乱れていた。
王国軍騎兵は、目立つ帝国軍騎兵と、ウェスティン領地軍の騎兵に狙いを定めた。
走る馬と交差する、槍。
1人、また1人と、馬から落ちる。
騎兵がかなり減った時、帝国軍の増援が現れた。
「まだあんなにいるのか…」
とある兵が呟いた言葉は、王国軍の総意だったであろう。
帝国軍の大部分は、西軍の生き残りと南軍の増援隊とやり合っているはずなのだ。
それがここに、この量の兵がいる。
王国軍に焦り、不安が広がるのも、無理もないだろう。
士気が下がる王国軍にサイモン中将は、必死に声をかけて、なんとか兵を奮い立たせ、なんとか戦を続けていたとき、はるか前方に黒い煙を見つける。
サイモン中将はそれを見て、
「敵の食糧庫は燃えたぞ! 作戦通りだ! 奴らはもう食い物はない! 今日明日しのげば、我らの勝ちだぞ!」
大声で叫ぶ。
実際、本当に食糧庫なのか?食糧庫だとして、どれだけ燃やせたのか、いっさい解らないのだが、サイモン中将は、それを気にした様子はない。
この声で士気が上がるのなら。
それは、王国軍に光を。
帝国軍や反乱軍に闇を。
士気が一気に変わる。




