引っぺがし
サイモン中将指揮のもと、王国軍は戦う。
だが、砦を急造したウエスティン領軍に苦戦していた。
木々で柵を作り板を張っただけの砦だが、かなりの効果を発揮する。
砦の中から弓矢が雨のように降り注ぎ、なかなか砦にたどり着けない。
王国軍も矢を放つが、砦に阻止されるだけ。
王国軍が徐々に兵を減らす一方であった。
「馬車を解体して盾を作れ! とりあえず降ってくる矢を防げればいいっ!」
中将の命令により、ただの木の板よりはマシ?程度の盾が作られる。
「これ、盾って呼べるのか?」
ウェインの第一声がこれだった。
馬車の荷台を引っぺがし、取っ手をつけただけの粗末な物だった。
「ないよりマシか」
ぼろぼろの盾を傘のように持ち、頭上から降る矢を防ぐ。
中には突き抜けてくる矢もある。
多少砦に近づくと、今度は直射、すなわち山なりではなく、まっすぐに人を狙った矢がくる。
盾を斜めに構え直して突っ込む。
何人かが、盾を突き抜けた矢を喰らい、その場に倒れてゆく。
ようやく何人かが砦に到達。
板を張っただけの砦に、両手剣を差し込み、テコの原理で板を剥がす。
「これでやっと戦える」
ウェインがニヤリと笑い、砦の中に数人単位で盾を構えながら侵入していく。
弓兵達が次々とウェイン達に斬り倒されていく。
弓矢とは、一度放つと、次を構えるまでの時間が必要だ。
走りながら構えられるものではない。
ウエスティン領軍の弓兵を守る兵が皆無だったため、砦の中で無双状態のウェイン達。
砦の中が混乱すると、当然砦の外に矢を放つ兵が減る。
王国軍が一気に砦の中に雪崩れ込んできた。
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