進撃のスネークス
「おそれながら、アレックス殿下! 弓矢も槍も跳ね返されてしまって」
と、兵士が報告する。
アレックス殿下と呼ばれたのは、ザビーン帝国の第2皇子である。帝位争いで手柄を求めて、スネークス王国とメンタル王国の戦の勃発を、この砦で待っていたのだ。
「ええい、役立たずめが! バリスタで狙えばよい!」
アレックス第2皇子が命令したのだが、
「バリスタは砦の外側を狙うために設置されているため、内側に向きません! 撤退を!」
と、兵士が無理なことを伝える。
「あんな訳のわからん奴らに負けて撤退などしてみろ! 帝位継承権を剥奪されてしまうっ!」
そうアレックス第2皇子が怒鳴ったとき、背後に寒気を感じたアレックス皇子は、無意識に後ろを振り向いた。
その時、すでに眼の前に迫っていたランスが、右眼に突き刺さった。
そのままランスを押し込まれたアレックス皇子は、脳が破壊されたのだろう、痙攣しながら倒れる。
「アレックス殿下っ!」
そう叫んだ兵士の首が飛んだ。
パトリックは、ランスから手を離して右腰の剣鉈を抜き、叫んだ兵士の首を斬り飛ばしたのだ。
頭部が地面に落ちた兵士の瞳は、見開かれたまま、地面を転がった。
パトリックは、右手でランスを掴み引っこ抜いて、その男の首を剣鉈で叩き斬り、髪の毛を掴んで持ち上げて、
「敵、指揮官、討ち取ったああ!」
と、大声で叫んだ。
スネークス王国の快進撃は続く。
開戦から数日後、北のアボット侯爵領にある第2砦に、ザビーン帝国軍が姿を見せた。
「思っていたより数は多いが、ここを落とすほどの兵量ではありませんな」
ライアン・アボットが言うと、
「まあ、食糧を運ぶ馬車が通れる道が有りませんしね。アレでギリギリでしょう」
と、ヴァンペルトが言う。
「どうします?」
ライアンがヴァンペルトの方を見て聞く。
「第2砦の走竜隊だけでこと足りそうですが、一応城壁の弓隊の指揮をお願い致します」
ヴァンペルトが、敵部隊を見つめたまま言う。
「承知!」
ライアンが応え、
「では!」
と、ヴァンペルトが歩き出す。
ヴァンペルトの指揮する毒蛇隊の走竜隊は、山岳地域では、まさに無双状態である。
移動速度はそれなりだが、四つ足の馬では無理な崖すら走竜は登るし、音も草などを踏む音は多少するが、鳴いたりしないので、発見されにくい。
崖の上に登った走竜の上から放たれる矢に、次々とザビーン兵士が倒れていく。
僅か300の走竜隊で、2000のザビーン帝国軍が敗走するのに、半日もかからなかった。




