暴れる
13日の金曜日ですね笑
パトリックは気配を消してひた走る。
目指すは指揮官の首。
混乱しているザビーン帝国兵の間を、器用に抜けていく。
「ええぃ、こうなっては砦に立て篭もって籠城戦しかないか! あんなバケモノと草原で戦っても勝てる見込みが無い! 退却だ!」
そう叫んだ指揮官の背後で声がした。
「バケモノとはぴーちゃんに対して失礼だぞ! 私のペットを悪く言う奴は、あの世で後悔しろ」
その言葉と同時に、指揮官の喉から赤い液体が噴き出して、その場で倒れた。
もがき苦しむ指揮官の頭部を、鉄の板入りブーツの先で、思いっきり蹴り飛ばしたパトリック。頭蓋骨が砕ける音がした。
倒れた指揮官を見て、ザビーンの兵士達が逃げ出す。
が、逃してくれるほどスネークス王国軍は優しく無い。
武器を構えて逃げるザビーン帝国兵は、空からのナイフ、歩兵の槍に騎兵の槍、そして遠距離からの弓矢に狙われ、その命を散らしていく。
そしてなによりも、ぴーちゃんの存在。
その巨大な身体は、ザビーン帝国兵が逃げる方向に制限を与えているため、スネークス王国軍は難なくザビーン帝国兵を倒せているのだ。
巨大な蛇の魔物に、好き好んで近づくという強者は居なかったのである。
「よし、あらかた倒したな」
パトリックの目には、無双するぴーちゃんと、逃げる兵士を捕縛するスネークス王国兵達が見えている。
「陛下! こちらの被害は皆無です!」
と、報告しに来た兵に、
「ご苦労! ディクソン大尉! カナーン中佐に、我らは先に砦に向かうと伝言を頼む。私と馬隊で先行するから、歩兵隊は、戦闘速度で後から来るように!」
そうパトリックが指示をだした。
ちなみにディクソン大尉は、声を出したパトリックならば、見つける事が可能である。
「御意!」
「では、ワイリー! 馬隊を頼むぞ! 続け!」
そう言いぴーちゃんの頭に乗るパトリック。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時間を稼ぐと言う話なのに、帝都に伝令を出した数十分後、巨大な蛇の魔物の襲撃を受けた、ザビーン帝国東の砦。
砦の見張り台から、その姿を確認した兵の報告により、慌てて砦の門を閉めたまでは良かった。
一斉に放った弓矢をものともせず、砦の門に体当たりした蛇の魔物が、壊れた門から侵入して暴れ回っている。
尻尾の一振りで数十人の兵が飛ばされ、壁に激突して倒れる。
S字のような体勢になったと思うと、次の瞬間には、目に見えぬ速さで伸びた頭部により、建物の壁が破壊されている。
逃げる兵士を、まるで豆ツブでも飲み込むが如く、次々と食い殺す魔物。
その光景を見せつけられていた、砦の最上部に居る、一際豪華な服装の指揮官が、
「おい! 早くあのバケモノを殺せ!」
と、兵士に怒鳴る。
巨大な蛇の魔物に砦内の兵士は、砦の外を全く見て居なかった。
数分後、スネークス王国の馬隊が、崩れた門から侵入。
襲撃を受けたザビーン帝国の砦では、馬に乗るスネークス兵の槍が味方の兵に次々と刺さる。
それに加えて、さらに数分後に侵入してきた、力の強い獣人が振り回す戦斧にぶった斬られ、上空から降りそそぐナイフで、兵が倒れる。
ザビーン帝国兵の数が時間と共に減っていく。




