真名2
ぴーちゃんの姿に、思い浮かぶものがあったパトリック。
「おお! ぴーちゃん、綺麗になったな!」
とぴーちゃんに話しかける。
「褒めて貰ってチョー嬉しいわ主!」
と、ぴーちゃんが少し高めの声で喋った。
「ぴーちゃん! 声が! 話せるの⁉︎」
と、驚いたパトリック。
「進化したからね」
と、自信に満ち溢れたような声のぴーちゃん。
「ぴーちゃん、夜刀神って知ってる?」
「ヤトノカミ? なにそれ?」
「違うか、似てるだけだよなぁ、やっぱり」
「私に似てるの?」
「なんとなくだよ。見たことあるわけじゃ無いしさ」
「ふうん、まあいいわ。さて今まで溜めまくった魔力をようやく使えたし、気分爽快! 本当はプーとペーも、ワイバーンのままで暫く溜めさせたかったのに、あの子ら力が湧いて、有頂天になって解放しちゃったから、普通の翼竜程度で止まっちゃってさ」
と、少し不満気なぴーちゃん。
「ん? プーとペーって、翼竜が最高じゃないの? 俺の血を飲ませて真名呼べば、また進化する?」
「多分強化して終わりかなぁ、やってみる? 進化の条件は、進化できる素養の有る個体が、上位魔物を食べる事と、魔力が充分溜まってる事。これが普通の魔物の条件で、使役獣はさらに、主の一部を貰い受ける事と、真名を呼んでもらう事ってのが追加されるわけ。プー達は2つの条件だけでやっちゃったからねぇ」
「ものは試し! やってみる」
先ほどと同じようにプーとペーに血を飲ませ、
「プロトティクス、ペロデティータ」
と、パトリックがプーとペーを呼ぶ。
プーとペーがボンヤリ光って体が少し大きくなった。
「ほら、やっぱり。翼竜王にもなれてない。せいぜい翼竜騎士か翼竜将軍程度ね。まあ、魔力は多少上がったし、卵が孵化するのも多少早くなるでしょ。あ、ポー達はまだまだ無理よ。まだ赤ちゃんみたいなもんだし」
「あの大きさで?」
ポー達は既に5メートル以上に成長している。
「だって湖で私が仕留めた水竜、もっとデカくてゴツかったでしょ?」
「確かに!」
「まあ、いいでしょ。主、先制攻撃は蛇竜王となった私に任せなさい!」
やる気満々のぴーちゃんであった。
ぴーちゃんのそのやる気が少し怖かったパトリック。
そんなこんなで準備が整い、
「じゃあ行ってくる」
と、パトリックがソーナリスに言う。
「手足引き抜かれても絶対に生きて帰ってくるのよ。今の私は、貴方無しではもう無理なの」
と、ソーナリスが言った。
何が無理なのかは読者の想像に任せる。
「えっと、何日なら耐えれる?」
と、困り顔でパトリックが聞くと、
「30日、それが限界。それまでに帰って来ないようなら、その時はプーかペーに乗って、それが無理だったらポーに乗って、五十音達を引き連れて貴方の元に向かうからね!」
と言ったソーナリス。
五十音達とは、ポーの兄弟達の事だ。
パトリックが、頭文字をアイウエオ順に、適当につけたのだ。アは、アズール。イは、イェンシーなどと、一応ちゃんと決めたが、普段はあーちゃん、いーちゃんと呼んでいる。
「わかった、プー、ペー、ソナを頼むよ」
プーとペーの頭を撫でて、パトリックが城を出る。
「スネークス王国軍、出発だ!」
と、大声で叫ぶ。
『オオッ!」
と、兵士達が応える。