表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300/316

真名

ぴーちゃんファンの方々、お待たせ致しました!


パトリックが独立を宣言し、スネークス王国を建国した年の秋。


作物の収穫も終わり、スネークス王国民達は冬に備える。

まあ、スネークス王国は北以外は温暖な気候であるが。


「準備は整った」

と言う、スネークス王城の広間に居る、黒髪に黒い瞳を持つ男。


「兵も集めた……」


続けて発した言葉は、これから戦に突入すると告げる。

だが、少し言葉が弱々しい。


砦には大量の食糧に武器を運び入れ、準備万端である。大型の馬車に大きな馬も多数手に入れてある。

兵士の強化と配置も既に終わり、明日の夜明けより王城を出て第1砦に入る予定であった。


ザビーン帝国の食糧不足は、この年の収穫では解消出来なかったと、情報も入ってきている。 

先の戦で、占領した土地の畑を荒らしてしまったため、不作だったのだ。


この冬が明けた時の食糧確保のために、攻めてくるのは、ほぼ間違いない。

それに先手を打つべく、先に用意していたのだ。この大陸には宣戦布告などという風習は無い。

そのため砦などで監視しているのだから。


ザビーン帝国が戦の用意が終わって、攻めてくるのを待つ必要などない。

のだが、


「なのに何故、今なんだ……」


ギャ?

キャギュン?

と鳴く2匹の翼竜。


「いや、良いんだよ。プーとペーの愛の結晶だ! キチンと温めて可愛い子を、私に見せてくれよ」

と、パトリックが2匹に言うと、


ギャ!

ギュッ!

と、嬉しそうに2匹が鳴いた。


そう、スネークス王城の広間にあるプーとペーの共同寝床には、大きな卵が2つ!


ペーが卵を産んだのだ。いっこうにペーに対して発情しないプーに、痺れを切らしたペーが襲っていたと、パトリックは使役獣係のガルスから報告は受けていた。


「プーとペーに乗って、敵の砦を先制攻撃しようと思ってたのに、2匹で卵を1つずつ温めるから無理か。ポー達は城の防衛で堀の中だし、そもそも水の外では動きが遅いしなぁ。体は硬いから矢などは刺さらないけど、どうするかなぁ?」

と、パトリックが独り言をいうと、パトリックの右肩を何かがポンポンと叩く。


「ん?」

と言って振り返ると、ぴーちゃんの大きな顔が。


ニヤリと笑ってるように見えるのは錯覚だろうか?


「え? 俺の血?」

ぴーちゃんがパトリックに何か言ったのだろう。

パトリックが聞き返すと、頷くぴーちゃん。


「別に良いけど、喉が乾いたなら水持ってくるよ?」

パトリックがそう言うと、首を振るぴーちゃん。


「ん? 違うの? 進化に必要? ぴーちゃん進化するの⁉︎」

そう言いながら左腰の刀を抜いて、左手小指をスッと刃に滑らせ、傷から滴る血液。


口を開けてぴーちゃんがそれを飲む。


「もういいの?」

口を閉じたぴーちゃんを見ながら、パトリックはポーションを飲む。パトリックの指の傷がスッと消える。


ぴーちゃんはパトリックを見つめる。


「え? 真名を呼べ? 本当の名前を?」

パトリックが聞き返すと、ぴーちゃんが激しく首を縦に振る。


「ピクロスティアー」


パトリックがそう言った刹那、呼ばれた真名に呼応するかの如く、激しく光り出したぴーちゃん。


数分後、光が収束しその場に居たのは、虹色の光沢を放つ黒真珠のような鱗を持つ、一匹の巨大な蛇。

紅い瞳に、頭部から前方に伸びる2本の角。


その姿は常陸国風土記に登場する、夜刀神のようであった!







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ぴーちゃんってなんやねん、とか思ってたら真名めちゃめちゃかっこいい名前でした。すみません。
[良い点] おぉ! 久しぶりにぴーちゃんの活躍が読める!!・・・か?(東スポ風)
[一言] まさかのニーズヘッグ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ