怒鳴る
「まったあぁぁぁ! 城潰すのは勘弁してくれぇ〜」
アントニーが慌てて登場して、パトリックに頼んだ。
「来たなこのガキャァ! ワレ、ウチと対等とか舐めてんのか!」
パトリックがアントニーに怒鳴る。
「違う! そんな事言ってないんだ! 譲歩して良いから、友好条約を早く結んでこいと言ったんだ! 殺されたくないから!」
と、手違いだと言い訳するアントニー。
「じゃあなんで、対等な条約を結んであげましょうって、大使が言うんだよ! なにか? お前んとこの大使の権限は、王であるお前のより上なのか? お前は大使にちゃんと意図を伝えられない無能か? 無能の舎弟とか要らないから、お前ぶち殺してこの国乗っ取ろうか? ああ⁉︎」
「やめて〜殺さないで乗っ取らないで! 今大使を連れて来させてるから!」
そんなやりとりが繰り広げられ、一時間後、プラム城の玉座に座るパトリックの目の前に、エリオ大使が引きずるように連れてこられた。
何故引きずられているのか?
パトリックの殺気で、エリオ大使の足が震えて歩けなかったからだ。
いや、エリオだけでは無い、この空間に居る全ての者が震えている。
エリオ大使を引きずっているアントニーだけが、唯一動けると言った方が良いだろう。
さすがは王といったところか。
「お前か、偉そうに対等な友好条約とか言った奴は。良い根性してるな。アントニーから譲歩して良いと言われてるのに、対等を持ち出したんだ。それ相応の価値がプラムに在ると言いたいんだろう? 何がある? 食糧か? 間に合ってるぞ? なんか言ってみろ、こら!」
と、エリオ大使に殺気全開で問いただすパトリック。
「あ、あああ、あのその、へい、そう! 兵力です! わわわ我が国は身体能力の、たた、高い兵士が揃っております! 人族より戦場で有益でしょう! 対等な友好条約を結んでいただければ、いい戦になった時に応援に行くと、かなりの戦果が期待できますです! はい!」
かなり噛んだが、そう答えたエリオ大使。
「ほう、戦力として獣人の命を差し出すというのか? 良いだろう。対等は無理だが、それに近い条件で友好条約を結んでやる! ただし! お前も戦場に参加する事が条件だ! 人の命を出すというのだ、自分も出なければ、他の国民に対して不誠実だろう? 決まりだな」
と、勝手に決めたパトリック。
「えぇ?」
エリオ大使が戸惑いの声を上げる。
「アントニー、お前もおもしろい部下持ってるじゃないか。今後、ウチとの交渉はお前かコイツで行うことにする。いいな?」
アントニーを睨んでパトリックが言うと、
「はいっ!」
と、直立不動で返事するアントニー。
「では、近いうちにザビーンと戦をするので、兵力を出すように! では帰る、あ、兵士の数が少なかったら、後でどうなるか分かってるよな?」
ニヤニヤ笑いながら帰るパトリックであった。
エリオ大使は、アントニーからめちゃくちゃ怒られたのだが、それは記すまでもないだろう。