変化
領地、いや、国に戻ったパトリックは使用人達に、事の成り行きを説明をしていた。
「という事で、スネークス辺境伯領は、スネークス王国となる! おそらくワイリーやヴァンペルト、他の周りの家もうちに続くだろう。もはや西はウチ無しでは経済が回らないはずだからな」
と、確信でもあるのだろう、自信たっぷりでパトリックが言う。
屋敷の使用人たちは、多少戸惑っているようだが、今更言っても仕方ないと諦めモードである。
「それはいいですけど、ウィリアムお兄様はどうなってるのでしょう?」
と、ソーナリスがパトリックに問いかける。
「マクレーンをはじめ、王城に立て籠もってた奴らのほうを引っ掻き回してきたから、多分揉めてるだろうし、もしかしたら戦どころじゃ無いかもしれん。まあ、兵もガッツリ脅してきたから、勝ちは揺るがないと思うぞ。なんなら後で見てこようか?」
と、ソーナリスを見つめて答えたパトリック。
「それなら良いのよ。一応兄だしさ、少しは心配なのよね。後でこっそり見てきてよ」
「おっけ〜」
と、2人の話が終わると、パトリックは顔を使用人達の方に向け、
「では、今後の動きを伝える。スネークス王国をある程度纏めた後、急ではあるがザビーン帝国に攻め入る! どうせザビーン帝国は来年ぐらいには攻めてくるのだ。待ってやる必要は無い! 武器と食糧の調達を急げ! アインは、各闇蛇達に伝達を。メンタル王国内の動向を探らせろ。もし馬鹿な貴族がまだ残っていて、ウチを攻めてくるなら、対応しなければならん。まあ、ウィリアム陛下、いや、メンタル王なら上手くやってくれるだろうし、攻めて来ないと思うが、あの人優しいというか、少し甘いからなぁ。あと、プラムとザビーンにも調査に走らせろ」
「はっ!」
と、アインが敬礼したが、他のものは戦と聞かされ、不安そうだった。
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メンタル王国は今、混乱の最中である。
マクレーンの乱は失敗に終わり、王位は正式にウィリアムが継承し、新王となった。
そこまでは良い。
問題は、謀反に加担した家を粛清しなければならない事だが、国の中枢に居た家が謀反に加担した事だ。
宰相をしていたベンドリック侯爵家は、宮廷貴族で領地はなかったが、国内で相応の地位と力を持っていた。その家の執事の魔法の影響とはいえ、無罪放免にはできない。
ベンドリック元侯爵は、責任を取って打ち首と決まる。
宰相の地位は、紆余曲折あったが、ディクソン侯爵家当主が就任した。
ケセロースキー男爵家は、王国調査部という、重要な部署の責任者だった。だが、見逃すわけにもいかず、当主は打ち首。
その他、加担した貴族達の当主は、漏れなく打ち首である。
家は爵位を取り上げられたが、家族の命はとられなかった。
さてここで、ウィリアム王は困ることになる。
何故なら、ただでさえ今までの混乱で貴族の数が減り、新たな男爵などを増やして対応していたのだが、その新たな男爵達の相当数が、今回の謀反に加担した。
男爵は領地持ち貴族の底辺であるが、それでも領地持ち。相当数の村や町が、領主を失った事になる。
領地を任せる新たな貴族を増やさねばならないが、今回、功の有った貴族の数が少ないのだ。パトリックの暗躍と、マクレーン側の自滅なので。
とても数が合わず、考えた末にウィリアム王が出した結論は、大きな派閥の家が任命した騎士爵を男爵に任命し、派閥で手厚くサポートしながら領地運営させるというものだった。
パトリックが聞いたら『手柄も無いのに、貴族にしてやるなど甘い!』と、言うだろう。事実、ディクソンやアンドレッティ、サイモンなどは、甘いと進言した。
だが、代案を出せとウィリアムに言われたが、良い案を出せなかったのだ。
そのため、それなりの数の騎士爵を新たに男爵に任命して増やし、この危機を乗り越えるために、今はその対応に追われている。
カナーン家は、ウィリアム王の脱出を身を呈して助け、その後、多方面で王を助けた功績と、貴族が減った事による領主不足のため、侯爵に任命。これにより南は、ディクソン侯爵とカナーン侯爵の2家で、ほぼ占められることになった。
サイモン侯爵家は、正式にウェインが当主となり、王国近衛騎士団長に就任した。
アンドレッティ元近衛騎士団長は、国軍参謀という相談役のような役職に就任しており、国軍は数が減った2軍と3軍は統合され、新たな2軍となり、再編された。