言い争う
一方、城の外では、日が暮れたために各当主がテントの中に移動して、会議の真っ最中である。
「たしかにスネークスが貴族になってから、反乱が多発している。王族の謀反が連続して起こるなど、こんな事は王国史上無かった事だ」
と、とある貴族の当主が言うと、
「たまたまだろう? スネークス辺境伯が間接的に原因と思われるのは、ソーナリス王女誘拐計画の騒動くらいのはずだ」
と、アンドレッティ近衛騎手団長が言う。
「いや、スネークスのせいで領地運営出来ずに、仕方なく脱税して、王家から罰を受けた家が多いのは事実だ」
と、別の貴族が言うと、
「運営費をどこかから借りれば良いのだ。それもせずに脱税など間違っている。それに元々は、実力も無いのにパットに歯向かうからだ」
と、デコース・フォン・カナーン王宮魔術士が言う。
「カナーン王宮魔術士殿は、黙っていてもらいましょう! 貴方はスネークスの従兄弟だ」
「そもそも、あの出世のスピードは異常だ。ウエスティンの反乱、奴が裏から手を引いていた可能性もあるのでは?」
「リグスビー家も絡んでいたからな!」
「そもそも実の親をその手で切る男だ。何考えているのか分かったもんではない!」
と、口々に言い放たれる。
「いや、パトリックはそんな男では無い!」
と、ウィリアム王太子がそれを否定したが、
「しかしウィリアム王太子、そうは言っても出世スピードが異常過ぎます。いくら王のお気に入りだったとしても、事件が起こり過ぎてます。ソーナリス王女誘拐計画の話も、ヤツが王に報告した話でしょう?」
と、ウィリアムに言い返す者まで出てくる。
「それはウチが掴んだ情報だ!」
と、アボット辺境伯が叫ぶと、
「アボット辺境伯は、ヤツと同盟関係でしょう! 信じられませんな!」
「ウチが嘘の報告をしたというのか!」
「鉄狐の言う事で、潰された家も多いのでね」
「ウチは事実しか報告せん!」
「だいたい、張本人のスネークスはどこ行ったのだ! 逃げたのか!」
などと、ウィリアムの周りに集まっていた貴族当主達が揉め始める。
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一方、王城はというと、
「援軍はどうしたっ! 何故まだ来ないのだ!」
と、部屋の中の調度品を蹴り、八つ当たりするマクレーン第3王子に、
「マクレーン殿下、少し湯あみでもして、気を落ち着けられては?」
と、目の焦点のおかしいベンドリック宰相が、マクレーン第3王子をなだめる。
「う、うむ。そうだな、そうするか」
と、部屋を退室していくマクレーン第3王子。
「やれやれ、図体は大きくても中身は子供だな」
と、ベンドリック宰相が、少し呆れた声を出す。
「確かに。まだ少し幼いところもあるようです」
と、ケセロースキー男爵が頷く。
「プラム王国が、明日までに来れば良いのだが」
と、言ったベンドリック宰相に、
「それなんですが、先ほど部下から光暗号(ランプを使ったモールス信号のようなもので、日が暮れてからの伝達によく使われている)で報告がありまして、国境の門が閉じられプラム王国に入国すら出来なかったようです。スネークスになんらかの対策を打たれたかもしれません。プラム王国が来ない可能性も。ベンドリック宰相殿の家で軟禁していた、ギブス侯爵のところの孫なども奪還されてしまいましたし」
と、ケセロースキー男爵が愚痴っぽく言う。
「うちの屋敷は粉々だ! スネークスの奴め!」
「援軍も来ないかもしれませんし、どうするおつもりで?」
「なに、まだ作戦はある。任せておけ」
「もう時間に余裕がないのです。頼みますぞ。私は部下の指示をしてきますので、失礼します」
ケセロースキーが、そう言って退室していく。