聴取
「リグスビー少尉、上が君に聞きたい事があるそうだ」
戻った上司が言う。
「パトリック・リグスビー、出頭致しました」
敬礼しながら周りを見て、パトリックは少し驚く。
そこに居たのは、軍の重鎮は勿論、国の重鎮までいたのだ。
「リグスビー少尉、わざわざすまんな。そこに掛けてくれ」
そう言ったのは、50歳ぐらいの赤い髪の毛、鼻の下から顎にかけての立派な髭。いかにも力のありそうな筋肉質な身体に、180センチほどありそうな身長。
アンドレッティ大将である。
軍の実質トップだ。
一応上に元帥が存在するのだが、元帥=国王なので、軍トップというと、大将をさす。
まあ、この場には元帥も座っていたのだが。
「はっ! 失礼します」
いかにもと空けてある席に座る。
「で、君に聞きたいのは、ウエスティン家とリグスビー家の関係だ。まあ、繋がりがある事は、聞いている。が、裏切りにまで加担するほどなのか?」
確かに普通は裏切に加担するのは、リスクが高いから、やらないだろう。
が、
「まず、うちの状況から説明させて貰います。
うちの両親、まあ、私の母は他界してますから、父親と、兄達の母親である正妻ですが、物凄く金遣いが荒いです。税を取る上限が決まっている王国で、国に納める分以外が、領地の運営費なのは、皆さんなら、誰でも理解されているでしょうが、そのほとんどを宝石に使う正妻、では、領地の警備費用はどうするか?そう、その費用をウエスティン家に頼っているのです。
借金はかなりの額になっていると思います。
それをウエスティン家から、借金の利子を下げるとか、元本を少し減らすとか囁かれたら?
また、帝国は、税の率は、領主任せの国です。
帝国が勝てば、その後、帝国貴族にすると確約されれば?簡単に国を裏切ると思います」
「確証はあるのか?」
「確証はないですが、裏切ってないと思うほど、私はあの人達を信用出来ません」
「君は何故、それほど家の人間を信用出来ないのか?」
「私の生い立ちを話しましょうか? 少しお時間を頂きますが?」
話を終えたその空間に、暗い雰囲気が漂う。
「わかった、リグスビー少尉の意見を尊重し、リグスビー家が裏切っていると思って行動するべきだな。リグスビー少尉、他に何かあるか?」
国王が口を開いた。
「はっ! 元帥陛下! 他にも裏切っている家があるかと思われます」
「「なにっ!」」
何人かが声をあげた。
「西の方の家は、農業に向いていない領地がいくつかあります。そこに支援という名の貸付をウエスティン家はしています。その領地の領主は、ウエスティン家に頭が上がらないはずです。
酷い所だと、娘を差し出した家もあるとか」
「むむむ」
「その家はどこかわかるか?」
「は! ハーター子爵家です。あと、貸付されてるのは、カーリー男爵家と、エージェー男爵家だったはずです」
「その三家の領地は、確かに農業には不向きな地が多めだな。しかしリグスビー少尉、何故そこまで詳しく知っている? 家で冷遇されていたなら、情報は知らされぬだろう?」
国王の言葉に、
「母が存命の時、私の母に付いていたメイドから聞きました。今は、母の実家の、カナーン男爵家に戻っているはずですが」
「ふむ、なるほど。さて、だいたいの事情は分かった。軍の動き方はアンドレッティ大将に任せるとして、リグスビー少尉、君にはとある事を頼みたい。なに、君はなかなか優秀らしいからな。勿論、念の為監視もつけるが、私個人としては、君を信用して良いと思っている」
「ありがとうございます! で、頼みとは?」




