ライアンの叫び
「で? どう言う訳で、連絡をしてこないのかの話から聞こうか」
パトリックが切り出すと、
「マクレーン殿下から、謀反に協力しろと手紙が来たのだが、北の備えがあるので動けないと返したら、息子の妻、クロージアの母、つまり第3王妃のアリシア様の身が大事なら、スネークス辺境伯家と連絡を断ち、領地から動くなと脅迫されたのだ」
と、アボット辺境伯が理由を説明した。
「自分の母親を人質にするとか、あのガキ頭大丈夫か? しかし、それでも間者くらい出せるだろう?」
と、パトリックが言うと、
「こっそり数人の間者を走らせたが、ことごとく捕縛されてしまい、そちらの間者も来たが、顔の知らない者だったので、本当にスネークス辺境伯家の間者か、マクレーン側が、スネークス家の間者と偽っているのか判断できないでいた。手紙など託して、それを奪われると、アリシア第3王妃の命が危ない。どうにか出来んかと悩んでいたのだ」
と、アボット辺境伯が神妙な顔で言った。
「少し前から連絡が滞った理由は?」
と、謀反の前から連絡がつかなかった事を問うと、ライアンが、
「マクレーン派の近衛が、数ヶ月前から妻のクロージアの護衛だと言って、屋敷の中で常に見張っていて、動けなかったのです。妻の身に何かおこると、お腹の中の子が危ない」
と、理由を言った。
「お、懐妊したのか! おめでとう!」
と、ライアンの顔を見て、パトリックが言った。
「そんな訳で動けずにいた。アリシア第3王妃様をどうにか助け出せないだろうか?」
と、アボット辺境伯が言うと、
「ふむ、どこに囚われているのかが分かれば、可能かもしれんが、王城とは限らないだろう?」
と、パトリック。
「ああ、派閥の貴族の屋敷の可能性もあるな」
と、アボット辺境伯が返す。
「先ず居所がわかればなぁ」
と、頭の後ろで腕を組んで、パトリックが言うと、
「とりあえず西と北でない事までは掴んだのだが」
と、アボット辺境伯が、動けないながらも調査していた結果を報告した。
「なら、東か南か王都の屋敷か。よし、こちらでも調べてみる。連絡には顔を知ってる者を使うよ」
との、パトリック言葉に、
「頼みます! 何とかアリシア第3王妃を助け出して貰えれば、こちらも動けます!」
と、ライアンが頭を下げた。
「そういえば、今は見張りは居ないのか?」
パトリックが疑問を口に出すと、
「昨日ここを出発したが、隠れてる可能性も無いとは言い切れない」
と、アボット辺境伯。
「なら俺の事がばれたかもな。急ぎここを出発する! 何か分かったら連絡するから! それじゃあ!」
パトリックが席を立ちながら言うと、
「閣下頼みます!」
と、ライアンが叫んだ。