アボット領に
すいません。全然話が思い浮かびませんでした。
パトリックはすぐに飛び立った。
先ずは、南方面軍の方に向かい、ディクソン領に向け進軍中の、南方面軍の師団を見つける。
降り立って、暫定少将の認定を報告し、ディクソン領で王太子が待っていることを伝え、北に飛ぶ。
目指すはアボット領である。
プーの全速力を、身をもって体感したパトリックは、鞍に安全ベルトを取り付ける必要性を感じた。
とりあえず国境まで飛び、かなりの高度から、連絡の無いアボット領の動きを、特注の望遠鏡で観察する。
アボット家に、パトリックの存在を認識されないための措置だ。
北部山岳地域は、建設中の新しい北の砦に、けっこうな数の兵士が居るのを確認し、引き返して古い北の砦も確認する。古い砦にも、多数の兵士がいたので、現在は特に動いていないと推察する。
さらに引き返して、アボット本領(元々の領地の事、山岳地方からは飛地のため、山岳地方をアボット領、元々の領地を、アボット本領と言い分けている)まで飛び、
「プー、あの屋敷に降りるぞ。矢の届かない距離で旋回な」
そう言って、プーに指示したパトリック。
♦︎♢♦︎♢
「閣下! 大変です!」
アボット辺境伯の屋敷の警備兵が、大声で走り込んでくる。
「何事だ!」
アボット辺境伯が、警備兵に応えると、
「黒い翼竜が上空を旋回しております!」
「なに? その翼竜に鎧は?」
「はい! スネークス辺境伯家の家紋の付いた鎧が!」
「ふむ、こちらから連絡が無いのに、痺れを切らして来たな」
アボット辺境伯が言うと、
「どう致します?」
と、ライアンが父であるアボット辺境伯に尋ねる。
「中庭で出迎える! 中庭の人払いを!」
と、アボット辺境伯が警備兵に命令した。
「は!」
敬礼して、警備兵が走り去る。
騒然とするアボット辺境伯の屋敷の中庭に、ふわりと降り立つ漆黒の翼竜に、
「聞いてはいたが間近で見ると恐ろしいものだ」
と、声を漏らすアボットは、翼竜の背から飛び降りたパトリックに、
「ようこそアボット邸に!」
と声をかけた。
「アボット辺境伯殿、とりあえず言いたい事と聞きたい事があるが、先にこれだけ聞きたい。同盟は維持か破棄か? 答えを!」
そう声を張り上げたパトリックに、
「維持だ! 諸々の相談をしたい、とりあえず屋敷の中に!」
と、大声で応えたアボット辺境伯。
「分かった! プー、近づいてきた兵士には、尻尾で対応しておけ。出来れば殺すなよ」
そう指示したパトリックに、
「お前たち、絶対近づくなよ! 確実に死ぬぞ!」
と、兵士に注意したアボット辺境伯だった。