ベンドリック派対ディクソン派
ディクソン領の王都側の領境に展開する、ベンドリック宰相派のガナッシュ伯爵領軍と、ガナッシュ派貴族の兵士達の混成部隊。
それを防ぐ為に展開されている、ディクソン侯爵領軍とカナーン子爵領軍の混合軍。
そこに先ほど、ベンドリック宰相派軍の隙を突き、脇から攻撃を仕掛け、混乱させてディクソン領軍に合流してきた、ヴァンペルト率いる8軍の一部、走竜隊の兵士達。
走竜だからこそ通れる、険しいルートで進入したので、ベンドリック宰相派軍は全く対応出来ずに、兵士を100人ほど失っていた。
双方、長い睨み合いが続く中、待つ事に我慢出来なくなった、とある新兵が放った1本の弓矢が、相手方に飛んだことにより、激しい戦闘の火蓋が切って落とされた。
双方からの矢が、まさに雨のように降り注ぐことになる。
降り注ぐ矢が、兵士の体を次々と貫いていく。
兵士が1人、また1人と倒れていく中を、怪我人を背負って後方まで運び出していく衛生兵達(怪我人を治療することの出来る兵士の事)。
矢が尽きてくると、双方の槍を持った兵士が、一斉に走り出す。
槍兵達は、戦列を作り前進する。
ここで力を発揮したのが、東方面軍に配備された、ワイバーン用の長槍を持つ8軍の兵達であった。
長槍を造ったのは、パトリックの指示でスネークス家抱え鍛治師であるわけで、当然8軍やスネークス領軍にも、試験導入されている。
普通の槍の2倍以上の長さを誇る長槍は、取り回しこそ不便であるが、叩きつけるように槍を振り落とし、相手が届かぬ距離から攻撃できる! 間合いの長さは、大きなアドバンテージである。
8軍の長槍が、ベンドリック宰相派の兵士を命を確実に刈り取っていく。
呆気なく倒れていく兵士達。
長槍を掻い潜ってくる兵士もいるが、一兵士の力量は8軍が一番勝ると言われているぐらい、実力の差があった。
体勢を崩して突っ込んできたベンドリック宰相派の兵士など、精鋭8軍の相手にはならないし、8軍は的確に相手の首、または心臓を狙うので、倒れた兵士はポーションなど効かない。
それどころか、後方へ運ばれてすらいない。ベンドリック宰相派の衛生兵が、運び出す前に倒されているからであろう。
倒れて、踏みつけられる兵士達は、確実に黄泉への扉を潜ったであろう。
そうして、ディクソン侯爵派軍の兵士達が、ベンドリック宰相派軍を徐々に減らしてゆき、有利な戦況になってきた頃、はるか上空から急下降してきた、大きな生物が2匹。
鎧を纏いし翼竜だ。