表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/316

翼竜とは


指揮官の、獅子族の男は焦っていた。


メンタル王国には、ワイバーンを使役する魔物使いが居ると、噂は聞いていたのだが、翼竜の話は聞いてなかった。そして、御伽噺の中の翼竜の話は知っている。


嵐を呼び、都市を更地に変える風の翼竜。

火を噴く山から飛び立つ、炎を吐く翼竜。

伝説は数々あれど、全て噂でしか無く、翼竜を生で見たのは初めてであった。


なので、ワイバーンよりは強いだろうとは思ったが、その程度として進軍を指示した事を、今、激しく後悔していた。ここまで強いとは!


前方にいた部隊は、氷の翼竜の攻撃により、凍らされており、ほぼ壊滅。

もう後退するしかないと、撤退を叫ぼうとした刹那、自身の周りに黒いモヤが発生している事に気がついた。


漆黒の翼竜。


小さい頃に読んだお伽話に出てきた、闇の暗黒竜。


全てを飲み込む闇と、闇から発生する響きにより崩れ去り吸い込まれる都市。


物語の最後は、都市文明全てを吸い込み尽くし、荒地の大陸だけが存在する世界。


「あ、暗黒竜……なのか? 俺は飲み込まれて死ぬのか?」

黒いモヤに包まれ、すでに数十センチ先も見えない中、獅子族の男は呟いた。


「死にたいか?」

突然聞こえた声に、


「死にたいやつなどいるものかっ! 生きたいに決まっている!」

獅子族の男はその場で叫んだ。


「ならば部隊を撤退させろ。それと、プラム王宮まで道案内しろ。その条件を飲むなら、攻撃を中止してやる」

静かな、だが強い口調で聞こえた声に、


「王宮だと! 何をするつもりだ!」

と、叫び返す。


「なに、プラム王に少し説教というか、折檻というか、痛い目にあって貰わないと、俺の気がすまんのでな」


「陛下は、貴様などに会ったりしない!」


「なら、その時はその時で考えがあるさ。案内するのかしないのかどっちだ? このまま部隊と共に死ぬか? 全滅させてやるから、1人寂しくあの世って事はないぞ?」

その声は、最後通告に聞こえた。


「兵の命は保障してくれるのか?」

すでに死んでしまった兵には悪いが、全滅は避けたいと、獅子族の男は思った。


「案内するならな。早くしないと、どんどん凍らされて死んでいくぞ? まだ止めてないからな」

まだ殺され続けているようだ。


「わかった、頼むから氷の翼竜を止めてくれ!」

早く止めないと! 

そう思って、すぐさま懇願した。


「交渉成立だな」

その声の数秒後、黒いモヤが消えた時、目の前には暗黒竜の恐ろしく冷たい瞳が、獅子族の男を見つめていた。

死を連想させる、冷たい眼差しで。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 獅子族も パトにかかれば 猫となる ワイバーンじゃなくて闇の暗黒竜だなんて聞いてないよぉ~(指揮官)
[一言] この展開になってから何度も思わされますが 本当に情報って大事ですね
[一言] 身体能力と五感に優れる獣人軍1万が、壊滅。 そのうえ、王が苦しむことも確定っと。 本国のクーデターがどうなってるのかが気になるなぁ 獣人王に会ってる時間あるのかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ