ウィルソン少将
何も言わない少将をパトリックが、
「おいっ! なんとか言ったらどうだ!」
と、怒鳴りつけたのだが、反応が無い。
「貴様! 都合が悪くなるとダンマリかっ!」
と、再度怒鳴りつけたのだが、返事がない。
「ふむ、無視する気か? ならばこちらから攻撃してやろう!」
そう言ったところ、
「お、お待ち下さい中将!」
ウィルソンの横にいた老人が、叫んだ。
「なんだ?」
パトリックが言うと、
「そ、そのウィルソン少将なのですが」
「ウィルソン少将がどうした?」
「立ったまま気絶しております……」
「は?」
「白眼むいて、気絶してます」
「また、器用なマネを……」
と呆れたパトリック。
「抗戦する意志がある者はいるか? 相手になるぞ?」
と、少し高度を下げて南方面軍に問いかけると、
「降伏いたしますっ!」
と、老人が叫んだ。
「では、そのカスを簀巻きにしとけ!」
そう言って、プーに砦内部に降りるように指示するのだった。
♦︎♢♦︎♢
「では、君達はディクソン侯爵が謀反を起こし、ウィリアム王太子殿下を人質にとって、立て籠もっていると聞いていたのか?」
パトリックが確認すると、
「はい。救出作戦だと聞いておりました」
と、少将の副官である、キュベス大佐が答えた。
「なるほどな、おいっそこの簀巻きにされて、気絶してるカスを、横腹にでも蹴りを入れて叩き起こせ!」
パトリックが、その場にいる兵士に命令すると、
「は、はいっ!」
ボコッと、遠慮気味に蹴りを入れた兵士に、
「そんな蹴りで起きるわけないだろ! 殺す気で蹴り入れろ!」
パトリックが怒鳴る。
「はいっっ!」
ドスッと、良い音が響き、
「ウゲッゴホッゴホッ」
と、咳き込みながらウィルソン少将が目を覚ます。
「お。おいなぜ私が縛られている! 解け!」
と、モゾモゾしながら目の前の兵士に言う。
「やかましい! このカスが! ディクソン侯爵が裏切って謀反などと、適当な事ぬかしやがって! 貴様どうなるか解ってるんだろうな!」
パトリックが、怒鳴ると、
「ひっ!」
と、少し怯えたウィルソン少将。
「貴様がここを出たあとの段取りは、いったいどうなっていた? 砦を解放させてプラム王国兵を、国内に導き王都に侵攻か? プラム王国へはどう言ったのだ? 何か報酬でも約束したのか? 金か? 領土か?」
軽く殺気を放ちながら聞くが、
「知らぬ! 私は何も知らん!」
と、頑なに吐かないウィルソン少将。
「嘘だな。仮にもここの責任者だ。貴様を無視して話を進めるなどあり得ん。言いたくないなら、言いたくさせてやろう!」
そう言ってポケットから、折りたたみナイフを取り出したパトリックは、刃を出すと簀巻のまま地面に転がされている、ウィルソン少将に近づいていくのだった。