飛ぶ
人物紹介ですけど、時間見つけて移動させるかもしれません。その際、話数が乱れる可能性があります。まだ考えてる最中ですけど。
パトリックは領地から飛び出した。
文字通り飛んで出たのだ。プーの背に乗りペーを引き連れて。
目指すは南のプラム王国との国境地帯。
西から真っ直ぐ南方面軍の砦を目指す。
何故なら、南方面軍の指揮官であるウィルソン少将は、マクレーン第3王子派なので、まずはそこの不安を取り除くためだ。
ベンドリック宰相派の兵と南方面軍とで、ディクソン領を挟み撃ちされてしまうと、ウィリアム王太子の命が危なくなる。それだけは避けねばならない。
途中の山に邪魔されないように高高度を飛んだプーとペー。
「さ、寒い……」
パトリックは、プーの背の上で震えていた。
コートかと言いたくなるような軍服のおかげで、多少マシではあるが、顔や手などは覆われていないし、襟はソーナリスが閉じられないようにデザインして作ったため、首元から冷たい空気が入り込んでくる。
そして、プーとペーの飛ぶスピードが速いため、さらに体感温度は低くなる。
「手袋くらい持って来ればよかったな……」
そう言ったパトリックだが、今更取りに戻るわけにもいかないので、我慢するしかない。
遠くにようやく砦が見えてきたので、パトリックはプーに高度を下げさせると見えてきたのは、今にも砦から出発しようとする、師団規模の部隊。
「ヤバかった。ギリギリだったな」
そう独り言ってパトリックは、プーの手綱を掴むと
、
「プー、あの部隊の上空で停止しろ。高度は弓の矢が届かない高さで!」
と、指示するのだった。
〜〜〜ー
南方面軍の指揮官である、ウィルソン少将は、ディクソン侯爵領を目指して出発する為、馬に跨ったのだが、部下の兵士達がザワザワとうるさくなったので、
「貴様ら! 何を騒ついとる!」
と、部下を怒鳴ったのだが、部下からは、
「少将! それどころではありません! アレを!」
と、上空を指差した兵士。
その指が指し示す方向に。顔を向けたウィルソン少将は、
「なっ! ワイバーンかっ! 東方面軍の奴ら、2匹も逃しよったな! この大事な時に!」
と、顔をしかめる。
「少将、ワイバーンにしてはおかしな点があるのですが……」
「なんだ? とりあえずバリスタの準備をさせなければやられるぞ!」
「ワイバーンに無いはずの腕が見えるのですが?」
「なにっ?」
「それに、頭部に角が見えるのですが……」
「ええ⁉︎ ま、まさか?」
「トドメとばかりに、鎧が付いてるように見えるのです……鎧の付いた翼竜といえば……」
そう言われてウィルソン少将は、上空を飛ぶ生き物をよく見る。
「た! 確かに腕と角がっ! 翼竜だっ! しかも鎧が付いてる! 死神だ! 総員砦に逃げ込め! 至急バリスタの準備をっ!」
慌てて大声で叫ぶウィルソン少将の顔には、焦りの色が見て取れた。