ベンドリック宰相
人物紹介、あのまま置いておきます。
続きは、人物紹介2として、どこかに最新話としてあげます。
その頃王城の一室では、
「ウィリアムに逃げられたようですな」
と、1人の男が言う。
その男は整った顔だちとに、黒い肌を持つダークエルフだった。
「ああ、全く役立たず共めが! マクレーンも黙って刺せば良いものを、わざわざ叫びよってからに」
と、謁見の間から戻ってきた男が言った。
「マクレーン殿下も、まだ子供という事でしょうな。叫んで自分を奮い立たせなければ、人を殺せないようでは、王の器では無いですね。ですがベントリック閣下、その方が操りやすいですので、上手く使うべきかと」
ダークエルフの男がそう言う。
「アーノルド、分かっておる。マクレーンには生きていてもらわねば困るのでな。娘が男児を産むまではな! 本当はウィリアムの方にも娘を嫁がせて、そちらでも男児が欲しかったのだが、ウィリアムは数回会っただけで、遠回しに断ってくるし、王は王で、本人が乗り気じゃ無いと聞く耳持たぬし、マクレーンだけはなんとか手懐けたから良かったものの、全く腹の立つ一族だ」
と、ダークエルフの男をアーノルドと呼んだ、ベントリック宰相。目の焦点が少しオカシイ。
「まあ良いではないですか、このままマクレーンが王になれば、この国は貴方の意のままなのですから」
アーノルドと呼ばれたダークエルフの男が、楽しそうに言う。執事服を着込んだその男は、口元を緩めている。
「本当なら王にも、もう少し長生きして貰う予定であったが、結婚に反対したので、早々に退場して貰った。しかしお前の調達してきた毒薬は、よく効くのう。毎日の夕食のワインに一滴垂らすだけで、あの痩せ細り方だ」
「アレは我が一族の魔法使いにしか作れない、特別な毒薬でごさいますので。入手に大金を使いましたが、効果は抜群でしたでしょう?」
「ああ! それに最後の薬も特別なのだろう? 飲んでから数時間後に効くなど、アリバイ作りにもってこいだ」
「アレはさらに値段が張る薬ですが、突然心臓の動きが止まる、暗殺にはもってこいの薬ですから!」
「だな! 疑われてもそれを証明する術も無いだろうし、完璧だな」
ベンドリック宰相は、アーノルドを褒める。
(クックック、上手く術が効いておるわ。すんなり事が運んで王を暗殺したが、その後が予定が狂ってしまったがな。まあどうせウィリアムとは対決になるしな。王国を乗っ取って帝国に仕返しするのだ。
帝国に潰された我が国の怒りを思い知らせてやる!)
そう思いながらアーノルドは、心の中で叫んだ。
(帝国を潰す!)
右手を硬く閉じて、握り拳を作りながら。