鼻歌
「それと、うちで手懐けた外交官から、垂れ込みがありまして、南のプラム王国の動きが怪しいです。国境沿いに軍を集結させつつあるようです。おそらくマクレーン第三王子派の外交官が、色々動いて示し合わせての行動かと」
アインが話を続ける。
「マクレーンのガキ、プラム王国まで巻き込んで、獣人達と協力してディクソン家とカナーン家を潰すつもりか⁉︎ いや、その前に謀反の戦力にするつもりだったのか? 南方面軍の指揮官はやつの派閥だったか。マズいな」
パトリックが額に手を当てながら呟く。
「どうされます?」
「とりあえず王都は、サイモン大将とウェイン達に任せて、俺は南へ飛ぶ! プラム王国を抑えてしまわないと、挟み撃ちになればウィリアム王太子殿下を、いや、もうウィリアム陛下だな! 陛下をお守りするのは厳しいだろう! コッチは今こちらに向かってるはずの、ミルコに任せる!」
パトリックがアインに言うと、
「では、ミルコ殿が到着次第、伝えますのでご指示を」
と、アインが聞いた。
「俺が鼻歌混じりの時を想定して、動けと伝えろ!」
パトリックが言うと、
「はっ! つまり極悪バージョンですな」
と、アインが言ったのだが、
「いや、アレは通常攻撃バージョンだが?」
と、何を言ってるんだという顔のパトリック。
「え?」
と、聞き返したアインに、
「え?」
と、聞き返すパトリック。
「お館様が鼻歌を歌っている時は、かなりエグいですが? 無慈悲というかなんというか」
と言うアインの言葉に、
「余計な事考えないように、鼻歌歌ってるだけなんだが? たんたんと行動する為に」
と、返したパトリックだか、
「つまり無意識の極悪ということですよね? 無意識なら優しくないから、極悪で合ってるかと」
と、極悪で間違いないと言い張るアイン。
まあいいかと、言い返すの諦めてパトリックは、
「まあいいとにかく任せる」
と、アインに言った。
「了解致しました」
「それと、北のアボット辺境伯家のほうは、どうなってる? 動きは?」
「アボット辺境伯家とは、まだ連絡が取れておりませんし、目立った動きもないようです」
アインの報告に、
「ライアン殿の妻のクロージア様は、あのマクレーンのガキの姉だからな」
「動く可能性が有りそうですか?」
「アボット閣下が居るから、クロージア様の事ぐらいで裏切るとも思えんが、無いとも言いきれん。どの道、どちらかに付かねばならんだろうしな。アボット辺境伯家と面識の無い間者を走らせろ」
「承知しました」