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ケビンとアイシャ、呆れる


教会に集まる人々、その顔には笑みを浮かべ、2人の若者の誓いの儀を見守る。


1人は、茶色の長い頭髪を、ツインテールに纏めた細身の女性。

大きな目に茶色い瞳の、誰が見ても美人と言うだろう。

ただし、肉食獣のような雰囲気が漂う、どちらかと言えば、強気な女性である。


1人は、金色の頭髪を、オールバックになでつけた細身の男性。

中性的な顔立ちに、緑の瞳。知らない人が見れば、女性と間違うかもしれない。

だが芯の強そうな雰囲気も漂う、どちらかと言えば優しそうな男性である。 


その2人の周りには、2人を祝う人達で溢れかえる。

侯爵家3男と、子爵家の長女の結婚式とは思えないほどの人の多さは、2人の人柄の良さと、重要度がはかり知れる。


王太子の妻の弟と、人族初の魔法使いの妹。

だが、政略結婚では無い純粋な恋。多少強引な手口を使った女性に、男性を狙っていた女性たちから、やっかみの言葉は聞こえはするが、その女性達だって裏では似たような事を画策していたはずなのだ。


さて、侯爵家の息子といえど、3男。しかも独立して軍に入隊という事は、平民では無いが貴族家の者でも無い、たんに貴族出身という扱いであるのだが、その結婚式は豪華なものだった。


ディクソン侯爵家の全面的バックアップにより、会場も広く、出席者も多い。これは息子の結婚式による繋がりを重視したディクソン侯の思惑である。息子が騎士爵程度を考えて準備していたのを知っていたが、裏から手を回して、息子に内緒でお膳立てしていた。


当日、馬車で有無を合わせず拉致、もとい連行、これももとい、連れ出して来た。


呆気にとられる息子に、

「私から独立のプレゼントだ」

と言いくるめて、なんとか納得させた。


が、新婦のアイシャはなんとなく察していた。

何故なら、アイシャの父、トローラは隠し事が下手で言葉の端々に、

「この衣装では規模に合わない」

などと、騎士爵程度の結婚式にあるまじき、王族の結婚式にでも行くのか? という衣装を用意したりしていた為だ。


だが、ここまで豪華とは思っていなかった。


そして極め付けに、スネークス辺境伯領から運び込まれた酒と料理。

青鶏の唐揚げや、焼うどん、山羊のチーズに、羊肉のジンギスカン、テリヤキバーガーモドキ等々、王都の貴族が食べた事がない料理が並ぶ。


完全にディクソン家とスネークス家は、事前に打ち合わせしている。でなければこの量の酒と食事の用意などできない。


「知ってるなら一言くらい言って欲しいわよね」

アイシャが言うと、


「父上も父上ですけど、スネークス辺境伯もスネークス辺境伯ですね。完全にスネークス辺境伯領の名産物の、売り込み会場と化しましたね。まあ、美味しいんですけどね」

そう言いながら、目の前の料理を口に運ぶケビン。


遠くで酔ったサイモン侯爵が、デコースに絡んでいる声が聞こえる。

娘との子はまだか、早く孫をと。


「ねえ? 主役は私達のはずよね?」

アイシャが、ケビンに言うと、


「一応そのはずだけど、個性の強い人が多いから……それより、このハンバーグってやつ、スゴイ美味しいよ! アイシャも食べなよ」

と、ハンバーグという初めて見る料理を、アイシャにすすめる。


「あら! 本当に美味しい! 柔らかくて噛むと肉汁が溢れる!」

と、アイシャが言うと、


「美味いか? 俺の作った料理だぞ!」

と、声がする。


「あ、パット兄様!」

「閣下! 閣下がお作りに?」


「ああ! 2人の料理は全て俺が作った! 俺からの祝いだ。食べた事ないだろう?」

と、パトリックが微笑む。


「美味しいけど、太っちゃいそう」

アイシャが言うと、


「たまに食べ過ぎたくらいなら、次の日少し控えれば大丈夫だろ。それに痩せすぎてると、子が出来にくいらしいから、気を付けろよ」

と、余計なお節介な事を言うパトリックに、


「あ、うるさい! スケベ! あっちいけっ!」

と、怒ったアイシャ。


「おお! 怖い怖い! じゃあケビン君、今夜頑張れよ!」

そう言って逃げたパトリック。


「閣下って、たまにオヤジ臭い事言うよね……」

ケビンが言ったのだが、パトリックが前世の記憶も合わせると、既に50歳を超えている事など知る由も無い。














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― 新着の感想 ―
[一言] ということは前世ロシア人も年齢合算でおb……何でもありません
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