アッハッハ
第1巻が発売されて、約1か月です。
WEBとは内容が少し異なりますので、違いを楽しんで貰えたでしょうか?
まだの方は是非!よろしくお願いします。
とある建設中の館。
外観はほぼ完成しており、後は内装の仕上げのみである。
「凄まじいスピードで出来上がるのだな。スネークス辺境伯閣下のところの職人はバケモノかっ!」
とある男爵がそう言うと、
「早過ぎて日数が少ない分、結果的に安上がりになりました。ですが、良かったのですか? 同盟に背いてまで、スネークス辺境伯派入りして。他の家から絶縁状が届いてますが?」
と、執事の男が聞く。
「かまわん! あんな男爵の集まりより、より強い辺境伯容認派のほうが、有益だ! いいタイミングで王家派の中立派だった私が、王太子派に鞍替えし、スネークス辺境伯容認派になっただけだ。それにスネークス辺境伯閣下が、酒を融通してくれるとドワーフ達に言ってくれたおかげで、またドワーフ達が戻って来ているし、良い事だらけだ!」
と答えたのだが、この男、王家より準男爵を授かり、先の反乱で功を立て男爵となった、筋金入りの王家派である。
王家派の中立派だったのは、どちらに着くか悩んでいた為であり、反スネークス派だったのは、単に自分より年下の若造が、辺境伯にまで成り上がった事に嫉妬していただけだ。
だが今は、パトリックの事を閣下と呼び、すっかりスネークス辺境伯容認派の一員気取りだ。
物凄い、手のひら返しだ!
スネークス人材派遣商会から、ドワーフ達を派遣して貰うために、わざわざスネークス領のパトリックの屋敷に赴き、頭を下げてドワーフと酒のセットで依頼したのだ。
領主本人が!
この時点で、擦り寄る気満々である。女心と秋の空どころでは無い。
いったいどんな心境の変化があったのか。
〔反スネークス同盟を抜けて情報を全て話し、尚且つ私に今後逆らわないと誓うなら、我が派閥の末端に加える事を、考えてやらなくもない〕
パトリックのその言葉に、元々擦り寄る気だったのだから、すぐさま決断して、ベラベラ喋ったのだ。
まあこの家は幸運であった。尻尾振る相手を、変える決断が出来たのだから。
え? 他の家? わざわざ言う必要ありますか?
聞きたい? 仕方ないなぁ。
一方、他の家はというと、酒が無い領地にドワーフは居付かず、食品商人組合が、モルダーの意のままに操られているので、食品も徐々に減らされる始末。
食糧の不足を不満に思った領民は、農家以外が徐々に他領に逃げていく。残るのは領地の広さによって計算される税金が払えなくて苦しむ領主と、積み重なる借金のみ。
とてもパトリックに対抗する力は無いだろう。
農作物から得る税金だけでは、領地を賄えはしない。人の経済活動あっての税収だ。
ちなみに、反スネークス派の男爵達の領地から、逃げ出した領民の大多数は、スネークス辺境伯領に移り住んだ。というか、無料でスネークス辺境伯領へ連れて行ってくれる、大型馬車が何故か何台も走り回っていたからなのだが。
そして落ち目の男爵達に、金を貸すと言い寄る高利貸し達。
利子はトイチ、つまり10日で1割の利子だ。
返せる当ての無い借金は、どんどん膨れていくだけである。
全ては誰かの思惑通り。
「ホールセー男爵の屋敷は完成したのか?」
パトリックの言葉に、ホールセー男爵の館の工事責任者のドワーフが、
「はい。先日建物は完成致しました。例の仕掛けもバッチリでございます」
と、答えた。
「お館様? 例の仕掛けとは?」
本邸執事のサンティノが、パトリックに問いかける。
「ん? もし裏切った時のために、屋敷の一部に仕掛けを施して貰ったんだよ。とある石1つ、ハンマーで砕くだけで、屋敷が物理的に崩壊するらしいぞ! アッハッハッ!」
愉快そうに笑うパトリックを見て、サンティノは、
「相変わらずやる事が容赦無くて、お館様らしい」
と、微笑んだ。
また、徐々に読者が増えて、作者としては嬉しい限りです。
面白いと思って貰えるように、頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。