足音
さて、話は食糧の事に戻るが、今まで輸出していた食糧が輸出されなくなって困る国家がある。
お隣りのザビーン帝国だ。
ザビーン帝国は国土は広いのだが、その中央部は砂漠が多いため、食糧自給率は高くない。
国家間の仲は悪いが、商人が食糧を輸出する事は、メンタル王国、いや、メンタル王家として止める事はしていない。というより帝国から金をむしり取る手段として、最適であるためだ。特に保存の効かない果実や葉物野菜などは、腐らせるくらいなら、帝国に輸出して金に換えたほうが、国に税金も入るし都合が良かったのだ。
が、現在は麦等の穀物や日持ちする芋などは勿論、果実も軒並みパトリックが買い占めているため、帝国に流れていない。
葉物野菜に関しても、パトリックがお好み焼きを広めたもんだから、キャベツは品薄だし、小麦粉もパンやパスタだけだったのに、お好み焼きに使うようになっただけでなく、うどんを作り、焼うどんまで派生してしまってさらに需要が増える始末。
キャベツの代用品として他の葉物野菜を使い出したので、これも帝国に流れていない。
となると帝国にとって、食糧不足という国を維持するのに1番厄介な問題を抱えてしまう事となった。
実はグレース達が暮らしていた国が戦禍に晒されたのも、帝国の食糧不足が起因している。
グレース達が暮らしていた国は多人種国家であったが、豊かな国土で食料自給率も高い国で、帝国にも輸出していた。
帝国は、隣のメンタル王国とは一応不可侵条約中なので、食糧不足解消のために、メンタル王国とは逆の隣国を攻めたのだ。
最初は、輸入される食糧の増量を要求していたのだが、自国を飢えさせてまで輸出する訳は無く断られた為、メンタル王国よりは小さいその国ごと取り込む事にした訳だ。
これはメンタル王国が、北部山岳地方を帝国との戦の準備のために取り込んだ時とは、理由が違うだけで、似たようなモノである。国の都合とはそういうモノだ。
結果は帝国の勝利であるので、食糧不足は多少回復したのだが、戦争により畑が荒れてしまったので、来季の収穫は減るだろう。
更なる戦争を隣国に仕掛けようにも、その先の国はエルフの大国で、緑豊かな国であり総人口も多いため、魔法使いの数も多い。
エルフは宗教上、攻撃魔法を侵略には使う事ができないが、国の防衛の為ならば、攻撃魔法を戦に使う事に問題が無い為、かなり手強い国である。
帝国は攻めるに攻められない訳だ。
さらなる食糧の入手の手段は限られている。
戦争の足音は確実に近づいてきている。
書籍化作業のため、少しお休み頂きます。
その間、改稿も進めます。
5月中旬には戻ってこれるように努力致します。
見捨てないで下さいね(>人<;)