辺境伯領の事
さて、今のスネークス辺境伯領を振り返ってみる。
スネークス領では酒造りはかなり重要な仕事である。
酒造りはスネークス家直営に変わっており、徹底した管理の元で運営されている。
だが、職人が少ないのが悩みのタネだったのだが、給与面をさらに充実させたので、ようやく若い見習いが大量に入ってきている。
そして増産を狙うべく、少し前から大量の麦の確保を開始していた。
麦だけではなく他の穀物や芋、果実など酒になりそうなものは何でも買った。
さすがに王国内の食糧事情を悪くするわけにはいかないので、その辺は気をつけたが、例年ならば余剰食糧は、商人が外国へ輸出していたのだが、そのほとんどをスネークス領で買い占めた。
商人としても、盗賊や魔物に襲われる危険を冒して他国に売りに行くくらいなら、多少値引きしても自国で売るほうが手間やコストを考えると助かるのだ。
スネークス領の酒としては、新しい果実酒ができたり、麦焼酎、蕎麦焼酎と焼酎の種類が増えたりした。
果実のビネガーなども造り、料理に使ったり、水で薄めて子供用の飲み物にしたりと、酒以外も好評である。
蕎麦はもちろん麺としても食べるのだが、カツオダシが無いので、青鶏の鶏ガラスープを使うことにした。当然ウドンもある。
スネークス派の貴族、まあ、ワイリーとヴァンペルトの領地だが、その領地の特産品である青鶏を使った唐揚げや、山羊のチーズは酒によく合うので、需要はうなぎ登り。
また羊毛による防寒着を軍用に転用しだしたので、そちらも好調である。
果実酒は女性という新たな顧客獲得に繋がり、さらなる利益を生み出した。
新たな酒は、バース・ネークスの本店や支店から広められ、バースタイルだけでなく、女性が入りやすいように、小洒落たレストラン形式の店も始めた。
これは富裕層に大変ウケが良かった。
さらに鉄板焼き屋も始めた。ソース造りに少し手間取ったが、お好み焼きや焼うどんを広めて、それらを食べながら酒を飲むという、平民が増えた。
このソースが西の領地で広まり、ソース文化が発展していく。
周りの貴族領主にのみ売ると宣言したものだから、商人達は周りの貴族領主に取り入って、ソースの入手に努め、貴族領主達は、ソース欲しさにパトリックに取り入る。
西の貴族の旗色は着実にスネークス色に染まりつつある。
そうそう、パトリックは青鶏の玉子を使った高級マヨネーズを造り、これが大変好評で、パトリックの直営店でのみ食べられるため、類似店との差別化に一役かっている。
他にも女性がお酌する高級店や、庶民向けのいわゆるキャバクラのような店。逆に男性が女性に接待する店なども営業して、酒の卸先の開拓にも抜かりはないパトリック。
全てパトリックの直営店であり、従業員はアインとモルダーの管理下で、情報収集も欠かさない。
金と情報がパトリックの元に集まるのだ。